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一章:男性保育士奮闘記
男性保育士と働くお父さん 06
しおりを挟むけれども、子供が欲しているのは、正(まさ)しく素直な言葉なのだ。
結希の唇がワナワナと震えている。
頬が上気し、ふっくらとした其処は色を灯す。
「ホントに? 嘘じゃない? お父さんのこと、わかってくれる? お父さん、ボクのために頑張ってくれてるのに、放置してるって、悪い父親だって、皆が言ってるよ。それでも、マコ先生はお父さんの味方してくれる? お父さんのこと守ってくれる? 嫌いになったりしない?」
真っ直ぐに向けられる眼差しは必死で、だからこそ、彼が大人の何気ない言葉に胸を痛めてきたのだと解る。
服の前合わせを、ちんまり、とした幼児の手に引かれた。
頬を撫でてから、その手を彼の手に重ねて笑みを向ける。
「約束しよっか。マコ先生は何があっても、お父さんとユウキ君の味方だよ。はい、指切りげんまん」
重ねた手を取り、小指同士を絡ませ上下に揺らした。
結希は小さな声で「ありがと」と溢し、嬉しそうな、照れたような顔ではにかんだ。
* * * * * *
すぐにやって来たバスに乗り込み、結希の家の最寄りのバス停で降り、徒歩で五分程の距離にあるスーパーで買い物を済ませてから藍沢親子の住むマンションにと向かう。
本日の夕食はエビフライが良いと言う結希の希望を採用し、米、海老とパン粉、卵、小麦粉、ソースなどを購入した。
それに加え、一週間分の作り置きメニューを作れるだけの食材も買い込んできたので、スーパーの袋は二つ分である。
冷凍保存して温めるだけにしておけば、忙しくても手間なく栄養のある食事を摂れるので、実家にいた頃はよくしていた手法だ。
マンションはオートロックの見るからに高級なところだった。
僕の住むアパートとは雲泥の差だと思いながらエレベーターに乗り込む。
ルームシェアをして一緒に住んでいる幼馴染と隣に住む幼馴染の顔が浮かんだ。
幼馴染の琴村 雄仁(コトムラ ユウジン)と雌威(メイ)は双子なのだが、彼等の実家は特殊な環境であり、とある事情により、雄仁は僕とルームシェアを、雌威は隣の部屋で暮らしている。
お金を貯めたら彼等と相談して、もう少し住居のグレードを上げるのも有りかもしれないと考えながら、結希に並んで5階フロアで降りた。
夕食を作る片手間に作り置きするおかずも作り、タッパーに詰めていく。
結希には盛り付けを手伝って貰った。
大皿の上にレタスを並べ、その上にエビフライとキャベツの千切りを乗せていく。
作ったタルタルソースと切ったレモンを隅に添え付けて完成である。
テーブルまで運んで貰っている間に二人分の茶碗にご飯を盛る。
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