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一章:男性保育士奮闘記
男性保育士と働くお父さん 05
しおりを挟む保育園の近くのバス停でバスを待つ。
「あのさ、ユウキ君。お家に何か食材あるかな?」
「ないよ。いつも出来合いだもん」
隣の黄色い帽子に向かい問い掛けると、その帽子は左右に揺れた。
そっかあ、と相槌を打つ。
「じゃあ、家に向かうまでの間にスーパーとかある?」
「うん、あるよ。なんで?」
くたり、と横に傾(かし)ぐ小さな頭に掌を乗せた。
僕のしようとしていることは、恐らくお節介でしかないのだろう。
それでも自分に出来ることをしたかった。
ただの自己満足だと自覚していても行動したいという気持ちは抑えられない。
「寄って行っても良いかな? 今日は先生がお夕飯作るよ。食べたいものある?」
そう答えた僕に、結希は神妙な顔付きになり俯いてしまう。
マコ先生、と堅い声に呼ばれ、僕はしゃがんで結希と目線を合わせた。
唇を噛み締めている結希は怒ったように僕を睨む。
「同情ならいらない。優しいフリして入り込まれても迷惑なだけだよ。最初は皆、大変だねって優しくしてくれた。でも、その内にお父さんのこと悪く言うようになるんだ。何にもしないヒドイ父親だって。陰でコソコソ言ってるの、ボク知ってるんだから。だったら。そんな上辺だけの優しさなら、はじめっからない方がいいよ。マコ先生だって、どうせお父さんのこと子供を放置してる悪い父親だって思ってるんでしょ?」
拳を握り、何もかもを拒絶する視線を向けてくる結希に胸が詰まった。
ゆっくりと首を否定の形に動かし、そっ、と彼の頬に両手を添える。
「先生もそうやって言われるの、すごく嫌だったから、ユウキ君の気持ち、良くわかるよ。家事や弟妹の面倒を全部僕に押し付けてる、って親戚が陰で話してるのは悔しかったなあ。何も知らない癖にって思ったよ。助けてくれる訳でもない人が陰で好き勝手言うのが理不尽で我慢ならなかった。でも、両親のことを解ってくれて、僕の気持ちも察してくれて、ちゃんと助けてくれる人も少ないなりにいてくれたから。それだから先生は今、こうやって此処にいるんだと思ってる。出来たら、出来るなら、先生はユウキ君にとっての頼りになる大人になりたい。それに、先生はお父さんのこと、すごいなあ、って思ってるんだよ。頼る人がいなくて辛い中で頑張ってるんだよね。お仕事もお父さんとしても頑張ってるって解ってるよ。だから先生は、お父さんの手助けをほんの少しでも出来たらいいなあって思うんだ。ダメかな? ユウキ君は嫌だ?」
素直な気持ちを嘘偽りなく告げることが何よりも大切で、そんな簡単なことが大人になるにつれて難しくなっていく。
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