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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
付き纏う王子 08
しおりを挟む抱える問題が解決しなければ、縋ることに意味などないのだ。
虚しいと知っていて、意味を求めずにはいられない。
何も考えずに甘えられる子供だったなら、生きることも楽だったのかもしれない。
「これ以上、僕に何も求めないで。僕はシヴァ様に何も与えられない。だって、何も持っていないんだ」
両頬をシヴァの掌が覆い、奪うみたいに唇が重なった。
乱暴な仕草なのに、優しく触れ、メシアを戸惑わせる。
啄むだけの口付けを、角度を変え繰り返し与えられる。
「お前が欲しいだけだ。何もなくてもいい。メシアの全てが、――ただ欲しい」
額がぶつかり、体躯に腕が回る。
ぎゅう、と抱き締められていた。
狡い男だ、とメシアの瞳からは涙が落ちる。
至近距離で見詰めてくる双眸には、焦燥と戸惑いが見えた。
「……呪われた僕を望むなんて、イカれてる。僕に触りたいだなんて、気が狂(ふ)れてる。貴方は馬鹿だ」
そろり、と青年の首に腕を回す。
顎を上げると唇が男のおとがいを掠めた。
「俺を馬鹿呼ばわりするのは、お前ぐらいだ」
何が楽しいのか、うっすらと笑うシヴァにメシアも薄く微笑んだ。
「僕を欲しがるのは、アンタだけだよ」
くふり、と笑って言葉を返した。
引き寄せられるようにして、互いに唇を近付ける。
くっついたところから他人の熱が伝わり、メシアを犯していく。
可愛らしい子供じみた接吻よりも、激しく奪って欲しいのだから、頭が沸いてしまったのだ。
ちろり、と舌を伸ばし男の下唇をなぞった。
「今日はいやに積極的だな」
「早く終わらせないと仕事に遅れる」
嬉しそうに弾んだ声色のシヴァに言い訳を放つ。
欲しがっていることは知られたくなかった。
「くそ、腹の立つ餓鬼だな、お前は」
「しなくていいなら僕は助かりますけど。どうします?」
やめないで欲しいのに、試すような言葉で青年を煽ってしまう。
睨んでくる男の口から溜息が零れ落ちていく。
「欲しがるまでイジメてやろうか、馬鹿メシア」
意地悪く囁いた唇に吐息を奪われ、メシアはゆっくりと視界を閉ざした。
下唇に吸い付かれ、うっすらと口を開ける。
ちゅくちゅく、と音を立てシヴァの唇に食まれると、もうどうにもならない。
全身から、ぞわぞわ、がやってくる。
それが快感なのだと昨夜教え込まれた肉体は、期待になのか、恐怖になのか、微かに震えていた。
「舌、出して」
欲の籠った低い声に、ぞくり、と背筋を悪寒のような愉悦が這い上がる。
瞼を瞑ったままで舌を差し出すと、ぢゅぶ、と口腔内に捕われた。
柔い口唇に挟まれ、ちゅう、と吸われていく。
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