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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
付き纏う王子 05
しおりを挟む軽く触れた柔らかなモノがシヴァの唇だと知っている。
昨夜、他人の粘膜と触れ合う恐怖の中にも快感があるのだと、強引にメシアに知らしめた男の唇だった。
「抵抗しないのか?」
二度三度と啄まれても反応のない少年に問う青年にと唇を尖らせる。
「抵抗したって無駄ならしない。どうせアンタには力でも権力でも敵わないんだ」
建前だと知っているからメシアはシヴァから目を逸らし俯いた。
本当に嫌なら無駄でも抵抗するだろう。
それをしないのだから、青年から齎される接触を好ましく感じていることに気が付いた。
「そんなこと言うと、全部奪うぞ?」
意地悪く口元を歪めるシヴァを睨み頬を膨らませる。
昨晩は粘膜が触れ合うのが恐ろしかった。
呪いが伝染ったら、と思うと恐怖で、それなのに、快感に流され、メシアは彼との触れ合いを享受してしまったのだ。
「もう十分、奪っただろ」
もっと触れて欲しい、などと思っている。
青年の唇が、彼の体温が、もっと欲しい。
メシアにとっての正常な価値観も、思考能力も、全部を奪い去って入り込んでくる男が憎らしい。
「まだ全然、足りねぇよ。お前の全てが欲しい」
熱く宣う青年に唇を塞がれ、メシアの心臓は不気味な脈動を打つ。
離れるべきなのだと思いながら、彼に全てを奪われたいと願っている異常さに体躯が震えた。
恐ろしいのに、恐怖を与えている元凶に身を委ねてしまう理由が解らない。
「ぼ、僕は。貴方のモノには、なれないよ。だって、だって。この街からは。呪いからは、決して逃れられないから」
そっ、と離れていく唇が寂しくて目で追うと、真っ黒な瞳と目が合う。
真っ直ぐに見詰めてくる双眸に、ぐっ、と胸から何かが込み上げてきた。
彼の所有物になれたなら幸せなのだろうか、と思考する己が悲しい。
無理だと知っていながら夢想することの愚かさはメシアを子供らしさから遠ざけていく。
肩を抱くシヴァの腕を振り払おうとして、頭を撫でられていた。
その手が頬に降りてきて、優しく撫でられる。
シヴァの両手に頬を包まれ、顔が上向いた。
「メシア」
名を呼ばれただけなのに、ひどく泣きたくなってしまう。
無表情な癖に慈しむ響きでメシアを戸惑わせる男に何も言葉を返せない。
「お前が幾ら拒んでも俺のモノにする。忘れるな。メシアの心も体も全て、俺のモノだ」
傲慢な物言いで、理不尽なことを言われていると解っていながら、メシアの胸の内は充足感に満たされていた。
頷き掛けて、その首は寸前で横にと動いていく。
温もりに流されるな、と自分を叱咤し唇を噛み締める。
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