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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 20
しおりを挟む確認するように問われ、メシアは何度も首を左右させる。
否定なのか肯定なのか、自分でも解らない。
それでも、今まで築いてきた自分という概念が崩れ落ちてしまうことは堪えられなかった。
シヴァという存在は、メシアにとって危険だと本能が察しているのだ。
「こわ、い。アンタなんか、大嫌い。もう会いに来るな。僕のことなんて、放っておいてよ」
拒否の言葉を口にして、胸がギリギリと痛み、心臓を締め上げられている感覚に陥る。
きっと勘違いしているのだ。
強引に踏み込んできた男に、誰にも触らせたことのない部分を触られ、無理矢理に快感を与えられた。
それを心地良いものだと勘違いして、自分はこの男を求めてしまっているだけなのだ、とメシアは必死で言い聞かせる。
明日になれば勘違いだと冷静になり、独りでも平気になるのだ。
それならば、今日だけは、今だけは、甘えても許されるのかもしれない。
温もりに溺れたとしても、メシアは自分を許せるのかもしれない。
「嫌えばいい。俺はお前を諦めたりしないから。どんなに嫌われても、俺のモノにすると決めた。メシア、覚えておけ。この世は権力と金に逆らえはしない」
なんて最低な男だろう、と思いながらもメシアも解っていた。
彼の言葉に間違いはなく、社会とはそうやって成り立っている。
そして、目の前の青年は一国の王子だ。
思い通りに出来ないことなど、今までも、これからも、ありはしないのだろう。
「シヴァ様。シ、ヴァ、さま。アンタが、どんなに僕を望んだとしても。僕はこの街からは、離れられないから。僕のことなんて諦めてよ。僕は貴方のモノにはなれない」
嫌な予感がした。
この男は馬鹿ではなく、権力も金もある。
奴隷の一人ぐらい、どうとでも出来るのだ。
けれども、メシアには無理なことだった。
この街を離れることは、決して許されないことだ。
胸の痛みが何なのか解らないままでメシアは身体を這い回る大人の手を掴む。
あんなにも怖かった人肌を、手放すのが辛い。
俯いたのは、自分が泣いているのを認めたくなかったからか。
唇を噛み締めて震える体躯を後ろの男に預け切ってしまう。
「メシア。泣くほど嫌か? この街に何の未練がある? お前を虐げるだけの場所に固執してどうなる? その内に殺されるぞ。……それとも、スノーレェィンの家の者が恋しいか?」
涙が溢れて止まらないことを後ろの男に知られてしまい、ふぐう、と唸った。
掴んだ筈のシヴァの手は、メシアの力では抑止など出来ず、彼の腕は好き勝手に動いてしまう。
目尻を長い武骨な指に拭われた。
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