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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 10
しおりを挟む無言で泉まで向かうメシアの足元では、するり、と木の根が蠢いては道無き場所に道を作っていく。
普通では有り得ない現象を、シヴァに見られているのが落ち着かない。
気持ちを鎮めようと空を見上げた先には満月があった。
森の中まで照らす月の明かりがメシアの心を軽くする。
「大丈夫、怖くないよ」
と励ましてくれている気がして、メシアはほっこりと笑った。
満月には不思議な力があると言った母が、魔女に通じているのは何となく解っていた。
ゴッドマーシュの血族は、この森に愛されている。
それは詰まり、ゴッドマーシュの血族が魔女の血を有していることと同義なのだ。
そしてメシアは、カースレストの奥深い場所で産まれたのだと聞いている。
その身に呪いを宿して産まれてきた自分が何者なのか、メシア自身にも解りはしない。
誰よりもメシア本人が知りたいと思っているのだ。
それだから、青年に探られる居心地の悪さにも堪える覚悟を決めた。
泉に辿り着き、ホッと息を吐き出し肩に掛けた布鞄を下の原っぱの上に落とす。
服を脱ごうとしたメシアの体は、逞しい腕に捕まっていた。
ひう、と恐怖に出た声はシヴァの胸に吸い込まれていく。
シヴァの腕に抱き込まれている事実に息が上手く出来なかった。
「はなっ、はなせ! さわ、る、なっ!」
突き飛ばそうと腕を突っ張ろうとしても敵わない。
震える腕で男の胸を叩いたが、力が抜けて撫でているに等しかった。
力の入らない体躯は、くたり、とシヴァの体に寄り掛かってしまう。
ガクガクと足が震え立っているのも辛かった。
「慣れろ。……俺は、お前に触れたい」
耳を擽る低い声に肩が跳ね上がる。
離れようと脱力したままの四肢で身を捩った。
「きた、きたな、い。僕、汚いから。服が。王子の服が。汚れちゃう」
離れる口実を咄嗟に口に乗せながらどうにか横を向くと、シヴァが笑ったのが気配で感じられた。
「っっ、おろ、せ!」
気付くと青年に抱えられていた。
肩を叩いても彼はお構い無しで泉の中にと入って行く。
シヴァの豪奢な服が濡れてしまったことにメシアの頭はパニックに陥り、思わず彼の肩口に顔を埋めてしまった。
水と陸地の境目の近くで降ろされ、メシアは腰の辺りまで冷たい水にさらされる。
見上げたシヴァの口元は弛んでいた。
酷く愉し気にメシアを見下ろしているシヴァの体が沈み、座り込んだのだと知れる。
肩まで水に浸かるシヴァに両手首を掴まれ、ぐっと下から引っ張り込まれ、メシアは体勢を崩して彼の膝の上に座り込んでいた。
「これで問題ないだろ?」
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