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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 07
しおりを挟む首筋を撫でる吐息が恐ろしい。
ふるり、と震える体を縮こませ、小さく「ソーマ」と呟いた。
「僕は奴隷だよ。ただの奴隷じゃない。奴隷の中でも最下級のアンクだ。前みたいに接することは無理だって解るだろ?」
肘でソーマの腹を押し拒絶を表しても、彼はメシアを離そうとはしない。
逆に強く抱き込まれてしまい戸惑いに息を詰めた。
「放せ」
メシアが困惑に動けずにいると腕を掴まれ、ぐいっ、と横に引かれ、そちらに体が傾いていく。
低く威嚇するような台詞が隣から聞こえてきた。
背後からメシアを抱くソーマも放そうとはしないため、不安定な体勢で体躯を震わせ、振り解こうと腕を捩る。
「はな、っ、放して」
何もかもから逃れようとしゃがみ込もうとするも、腰を抱かれてしまい適わなかった。
ガタガタと震えて言うことをきかない体躯を縮こませることしか出来ない。
縋るようにソーマに視線を向けた。
「放しては貰えないだろうか、シヴァ王子。彼は他人から触られることを苦にしている。我々スノーレェィン家の人間にとってメシアは大事な家族です。放して下さい」
低く感情を抑えた声色で普段からは想像出来ないソーマのバカ丁寧な台詞が響く。
「おねが、……ほんと、はなし、て」
力無く青年に懇願の言葉を掛けた途端、解放されメシアはソーマの腕の中でグッタリと力を抜いた。
彼の肩に顎を乗せて深呼吸を繰り返す。
背中を擦ってくれるソーマの手が心地良かった。
「……此処に来れば、また会えるか?」
自身の掌を凝視したままの青年が小さく問い掛けてくる。
ソーマにシヴァと呼ばれた彼の顔に表情はないが、何処となく戸惑っているようにも見えた。
「僕はアンクだ。高貴な方とお会い出来る身分ではない。会いに来ないで。迷惑だよ。仕事に遅れるといけないし、もう行く。ソーマ、皆に宜しく伝えておいて」
ソーマから体を離し、青年の顔を見ながらハッキリと告げたメシアは、シヴァと合ってしまった目線を無理矢理引き剥がし逃げるように早足で歩き始める。
彼の瞳には何の感情もない。
呑み込まれてしまいそうな漆黒の双眸がやけに恐ろしかった。
* * * * * *
奴隷小屋に戻ると、仲間のギーチ=ウォーグランテが迎えてくれた。
彼はメシアの姿を確認し安心したとばかりに、ほんわかとした笑みを浮かべる。
「良かった。遅いから心配してたんだ。荷物置いて来たら、早速だけど仕事に向かおう。行ける?」
「うん、平気。ごめん、変なのに絡まれて少し遅れた。すぐに出れるよ」
ギーチに頷き荷物はこのままで大丈夫だと示してみせた。
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