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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 02
しおりを挟む乳飲み児の白い肌全体を覆うようにして黒い模様が浮かんでいたと言う。
人々はその異様な様に恐れ慄き、穢れを呼ぶ異分子を迫害し排除しようとしたのだ。
そんなゴッドマーシュ母子を救ったのが、母、アツコの妹でシレンヒルの領主様、ソーゴ=スノーレェィンに嫁いだスズコ=スノーレェィンである。
アツコとメシアを匿ったスズコは、スノーレェィン家の離れに二人を置いた。
歳を重ねるにつれて、体に浮かぶ龍の影のような模様は消えていき、母子で幸せに過ごしていると思っていたスズコであったが、6年が経過した頃にアツコがメシアを虐待していることに気付いてしまう。
スズコは怒り、アツコだけをスノーレェィン家から追い出した。
メシアは離れから本邸に移り、其処でスノーレェィン家の家族として育てられることになる。
街に出れば迫害されてしまうが、それでも15歳になる年まで叔母家族に優しく育てられ幸せに暮らしていたのだ。
その生活が一変したのは、アツコがスノーレェィン家に再び訪れた時だった。
メシアを奴隷商に売ったと告げ、強引にスノーレェィン家から連れ出したのだ。
奴隷小屋に連れて行かれ、其処でアンクとして生きることを余儀なくされたメシアに、母はペンダントを一つ持たせた。
肌身離さずに持っていろと言われたペンダントには、円形の飾りがついており、何かの花の模様が刻印されているようだった。
とても綺麗な首飾りを、メシアは首に掛け母に頷いてみせた。
そしてアツコは、幼い頃に教えたことを絶対に守れと言い置いて消えて行った。
文字通り、彼女は何処からも居なくなってしまう。
街中探しても見付からないのだから、国外に逃げたのかと思い、スノーレェィン家で関所の記録を調べてもアツコが他国に入国した証拠は見付からない。
スズコは何かに勘付いているようではあるが、何も言わなかった。
メシアを奴隷商から買い戻そうとしたが、それを拒んだのはメシア自身である。
メシアは奴隷として売られた事実に傷付き、どうしようもなく悲しみに打ちひしがれたが、何処かで解っていたのだ。
これが母の愛情なのだと。
カーディチルとして迫害を受け館に閉じ篭って生活を送るよりも、奴隷として生きることで世の中を知る喜びを得られることの方が重要なのかもしれない。
そう思えるようになったのは、奴隷仲間の存在である。
彼等はカーディチルと呼ばれ迫害を受けるメシアに対し、怖がる素振りもなく接してくれた。
仲間として扱ってくれたのだ。
自分達もどうせ穢れた存在なのだと笑う奴隷に、メシアは嬉しくなった。
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