傲慢王子と奴隷少年

Neu(ノイ)

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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う

奴隷と水浴び 01

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1.泉には奴隷がいる
【奴隷と水浴び】


 鬱蒼と茂る森は、街の人間を寄せ付けない。
足の踏み場もない程に木々が密集し、一度迷い込めば忽(たちま)ちに己の居場所など解らなくなってしまう。
夜になれば、肉食獣の獰猛な鳴き声も聞こえ、その森はカースレスト(呪いの森)と呼ばれていた。
別名をウィーラスト(魔女を愛する森)と言い、最深部には魔女の集落があるとまで言われている。
魔女だけを通し、魔女以外の人間は排除する。
太古の昔から伝わる言い伝えである。
実際のところ、森の最深部まで辿り付けた人間がいないため、事の真相は解らず仕舞いだが、街の人間はそう信じていた。


 誰もが立ち寄らない森の中腹には、ぽつん、と小さな泉が在る。
そこだけ木々は生えるのを自粛したかのように存在せず、まるで泉を守るが如く、泉の周りを青々と茂る木が囲っている。
シン、と澄み切った空気はひんやりとしており、神聖であることを伝えていた。
人々が決して近寄ろうとしないカースレストのその場所に、足繁く通う者がいる。


 彼は毎日、朝昼晩の三回、必ず泉を訪れていた。
まだ幼さを残したほっそりとした小顔は青白い。
顔の小ささを引き立たせているのは、キノコのように、ほわん、と膨らんだ茶褐色の頭髪である。
少年が歩く先の絡まり合った木々の根は、彼を導くかのように道を開けていく。


 誰もを拒絶するカースレストが少年を受け入れている。
その事実が何を示唆するのか、賢い少年には解っていた。


 彼の名は、メシア=ゴッドマーシュ。
この土地、シレンヒルの領主一家の甥である。
実母に奴隷商へと売られ、アンク(死体埋葬や汚物清掃等の穢れ仕事をする奴隷)として奴隷小屋での生活を送り始めてからそろそろ一年が経とうとしている。


 メシアの心には決して癒えることのない傷があった。
その傷が彼の顔から表情を消している。
それでも何処か気品さを損なわない儚さを醸し出すのは遺伝のなせる技なのかもしれない。


 ほっそりとした体躯を、きん、と冷えた泉にと沈め、メシアは一気に水中に潜る。
汚れ切った体が清められていくのを全身で感じた。
この瞬間、メシアは自身が呪われていることを強く意識する。


 カーディチル(呪われた厄災の子)。
それがメシアの心に傷をつけた大きな要因である。
彼が生を受けた瞬間から、この街一帯を襲った厄災。
異常気象が続き大規模な飢饉が飢餓を人間に齎し、栄養不足は不治の病を流行らせた。
母がカースレストの奥にある隠れ家から赤ん坊を連れて街に戻った時に、厄災の源がメシアではないかと噂になったのは必然のことだった。
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