SとKのEscape

二章：悲劇の日から

記憶に取り残された幼馴染 08

　後ろにいる男達を振り返りつつも、クロを突くのをやめない稲荷は、下品にゲラゲラと笑い、ピースをユエに向けた。
ボクは、怒りに我を忘れた。


　勢い良く倉庫内に突入し、クロを犯す男の顔に拳を入れる。
油断していたのだろう、意図も簡単に拳は当たった。
どごっ、と音がして、クロを突き上げる動きは止まる。

「ッ、この野郎！　何しやがる！」

稲荷の腕が振り上がり、殴られると思った瞬間だった。

「やめろっ！　彼を殴ったら承知しないよ」

ユエの叫び声が響き、稲荷の動きが止まる。
その隙に、稲荷からクロを引き離した。
ずるり、と男性器が抜け落ち、クロの太腿を大量の精液が伝う。
どれだけ犯されたのかと思うと胸が張り裂けそうだった。


　クロを床に寝かせ、鞄からスポーツタオルを取り出し、汚れるのも構わずに彼の体を拭いていく。
怒りで手が震えた。
それでも今は、一刻も早くクロを綺麗にしたかった。


　ある程度拭き終わり、倉庫内を見渡す。
隅に捨てられているクロの私服を見付け、立ち上がると其れを取りに行く。
ユエと稲荷は何やら二人で話し込んでいた。
クロの服を手に彼の元に戻る。

「クロ君、クロ君起きたまえよ」

ぺちぺちと頬を叩くも、反応は一切返ってこなかった。
諦めて服を着させていく。
パンツとズボンを穿かせ、シャツを羽織らせた。


　一通り着替えさせると、鞄を片手に、クロを肩に担ぎ上げる。
身長はそう変わらないが、食の細いクロはそれでも軽かった。
そのままユエと稲荷に近付いていく。

「照須君、二度とボクと彼に近付かないでくれ。今度彼に何かあったら、許さないから。あんたもだよ、先輩」

二人を睨み付け宣えば、返事も聞かずにその場を立ち去った。


　クロを運びながら、施設には連れていけないなと、何処か冷静に考えている自分がいた。
ちゃんと体を綺麗に洗い、出来ることならば、早目にナカから精液を掻き出したい。
しかし、施設のお風呂に意識のないクロをボクが入れる訳にもいかないだろう。
不審がられると予想できた。
となれば、ボクの家に連れて行くしかない。
まだ両親も兄二人も帰っていない時間だ。
妹はいるかもしれないが、彼女は実家の中でただ一人、クロを受け入れている人間である。
問題ないだろう、と判断し、家までクロを担いで歩いた。

 
＊　＊　＊　＊　＊　＊


　あの後、案の定、家にいた妹に事情を問い詰められ、適当にはぐらかして、クロを風呂場で浄めた。