SとKのEscape

二章：悲劇の日から

記憶に取り残された幼馴染 07

当のユエは、ボクに疑われていると勘付いているだろうに、焦ることもなく、ただ微笑んでいる。

「違うかもしれないけど、行くの？」
「当たり前だ！　早く、早くしてくれ」

何処までもとぼけるユエに、公衆電話の台を感情的に叩き付けた。
ばんっ、と音が響いている。

「そんなに、大切なんだね。君がそこまで感情を剥き出しにするところ、初めて見たよ」

すっ、とユエの目が細まり抑揚のない口調で淡々と述べていく。
そして、ふっ、と口許にイヤらしい笑みを浮かべて小さく首を横に倒した。

「でもさ、今頃お楽しみかもしれないじゃない。邪魔したら可哀想だよ？」

言わんとすることを理解して、気付くとユエの胸倉を掴み、その頬に拳を叩き付けていた。
彼の体を放せば、後ろに数歩下がり、頬を押さえている。
暴力を振るったのは初めてで、拳の痛みに嫌な想いが広がった。

「はは、酷いなあ。どうして僕を殴るのさ？」

殴られても暢気に笑うユエを睨み付ける。
自分を落ち着かせるように深く息を吸い込んだ。

「すまない、ついカッとなった。頼むから、案内して欲しい。この通りだ」

此処で言い合う時間が無駄に思えて、頭を下げる。
ユエが感情の窺えない顔で此方を見ていた。

「解ったよ。カン君にそこまで頼まれたら仕方ないね」

ふふ、と息を漏らしてユエが歩き始めた。
後に着いて行こうと足を踏み出す。

「本当に好きなんだね、彼のことが」

そう掛けられた言葉は、聞かなかったことにした。
無言でユエの後を着いて行く。


　連れて行かれたのは、体育館の裏に併設されている倉庫だった。
体育館からは部活をしている生徒の声が響いてくる。


　ユエがドアノブに手を掛けた。
扉が開け放たれると同時に、噎せ返るような青臭さが鼻を襲う。
倉庫の中には、稲荷と彼とよくつるんでいる３人と、全裸のクロがいた。
白い液体に塗れてドロドロになっている。
胡座を掻く稲荷に背中を預けていた。
ぐったりとしていて、クロは動かない。
目も閉じられており、意識がないのだと解った。
そして、背後から足を抱えられ、秘部が露になっている。
クロの肛門には、男の性器が捩じ込まれ、隙間からは、グボグボと白濁液が溢れていた。


　動かないクロをお構いなしに犯していた男は、乱入者に気付き動きを止める。

「ユエちゃーん、この子、危ない系？　息荒げて変なこと口走ってさ、焦点も合わないから薬でもキメてんのかと思ったよ。まあ、楽しく美味しく頂いたけど、も！　な？」