SとKのEscape

Neu(ノイ)

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二章:悲劇の日から

精神科と睡眠科 06

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暫くなりを潜めていた貧血が、ここ最近、頻繁に起こってはいた。
それをサンが気に掛ける理由も解らずに首を傾げていると、サンの口から息が漏れる。

「とにかく、もう決めたことだよ。ボクの人生だ。どうしようともクロ君にとやかく言われたくないね。さあ、もう良いだろう?」

サンの手に肩を叩かれた。
拒絶されている。
そんな気がした。

「何があったのか、僕には解らないけど。何も精神科だけが医者じゃないんだし。他の科も視野に入れてみたら、どうなのかな? 僕を守ることに固執しなくても良いんだよ?」

何だかサンが僕に囚われて、自由を失っているように見えた。
僕達は友人であり親友だ。
彼の輝かしい未来は、これから先にあるのに、僕の存在が邪魔になるなんて許せなかった。

「そうだね。考えてはおくよ」

双眸を瞬かせるサンと目が合う。
彼は苦笑混じりに頷いた。
後ろ髪を引かれる想いで、それでも僕はサンの部屋を後にするのだった。




 中学を卒業して、サンは有名私立の進学校へ、僕は就職した。
会う時間は大幅に減り、毎日の重労働と周りからの視線に僕の精神は壊れ始めた。
サンに会えたなら、世間から齎される視線も気のせいで、僕の過剰意識なんだと、そう思えただろう。
僕のことを皆が知っている気がした。
DVを受けていた哀れな子。
母親を亡くして可哀想。
犯罪者の息子。
そんなレッテルを、全ての人間から貼られている強迫概念に襲われた。
そうなるともう、人にも会いたくなくなる。
外にも出たくない。
夜は眠れなかった。


 そんな最悪な状況でも、辛うじてどうにか仕事は続けていた。
働ける身で児童施設に置いて貰っているのだ。
少しのお金も納めていた。
辞める訳にもいかなかったのだ。
たまにサンと会い、其処で気持ちを強く持つように頑張った。
サンが大学に入る頃には、彼は二人で住めるようにとアパートも借りてくれた。
限界が訪れたのは、その少し後だった。
テレビで父親の事件が取り上げられていたのを、たまたま見てしまったのだ。
恐らく、似たような事件があり、比較対象として出されたのだろう。
生きる気力が無くなっていくのを感じた。
仕事も無断欠勤し、外にも出られなくなった。
もう死んでしまいたいと、何度も考えて、その度にサンとの約束を思い出し踏み止まるの繰り返しだった。
そんな時に、施設にサンがやってきたのだ。
施設の人が連絡を入れてくれたのか、彼は僕の状況を把握していた。
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