74 / 97
二章:悲劇の日から
精神科と睡眠科 06
しおりを挟む暫くなりを潜めていた貧血が、ここ最近、頻繁に起こってはいた。
それをサンが気に掛ける理由も解らずに首を傾げていると、サンの口から息が漏れる。
「とにかく、もう決めたことだよ。ボクの人生だ。どうしようともクロ君にとやかく言われたくないね。さあ、もう良いだろう?」
サンの手に肩を叩かれた。
拒絶されている。
そんな気がした。
「何があったのか、僕には解らないけど。何も精神科だけが医者じゃないんだし。他の科も視野に入れてみたら、どうなのかな? 僕を守ることに固執しなくても良いんだよ?」
何だかサンが僕に囚われて、自由を失っているように見えた。
僕達は友人であり親友だ。
彼の輝かしい未来は、これから先にあるのに、僕の存在が邪魔になるなんて許せなかった。
「そうだね。考えてはおくよ」
双眸を瞬かせるサンと目が合う。
彼は苦笑混じりに頷いた。
後ろ髪を引かれる想いで、それでも僕はサンの部屋を後にするのだった。
中学を卒業して、サンは有名私立の進学校へ、僕は就職した。
会う時間は大幅に減り、毎日の重労働と周りからの視線に僕の精神は壊れ始めた。
サンに会えたなら、世間から齎される視線も気のせいで、僕の過剰意識なんだと、そう思えただろう。
僕のことを皆が知っている気がした。
DVを受けていた哀れな子。
母親を亡くして可哀想。
犯罪者の息子。
そんなレッテルを、全ての人間から貼られている強迫概念に襲われた。
そうなるともう、人にも会いたくなくなる。
外にも出たくない。
夜は眠れなかった。
そんな最悪な状況でも、辛うじてどうにか仕事は続けていた。
働ける身で児童施設に置いて貰っているのだ。
少しのお金も納めていた。
辞める訳にもいかなかったのだ。
たまにサンと会い、其処で気持ちを強く持つように頑張った。
サンが大学に入る頃には、彼は二人で住めるようにとアパートも借りてくれた。
限界が訪れたのは、その少し後だった。
テレビで父親の事件が取り上げられていたのを、たまたま見てしまったのだ。
恐らく、似たような事件があり、比較対象として出されたのだろう。
生きる気力が無くなっていくのを感じた。
仕事も無断欠勤し、外にも出られなくなった。
もう死んでしまいたいと、何度も考えて、その度にサンとの約束を思い出し踏み止まるの繰り返しだった。
そんな時に、施設にサンがやってきたのだ。
施設の人が連絡を入れてくれたのか、彼は僕の状況を把握していた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる