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一章:SとK
時に想い出は残酷で 03
しおりを挟む機械的にスプーンを口に運ぶ。
ご飯が味気無く感じられた。
小学生の頃は、一人での食事も頻繁であったことを思い出す。
父親は外で済ませていることが多かった。
母親はパートとして夜遅くまで働いていた。
そのため、昔は一人の食事も日常であった。
母親が亡くなり、父親が逮捕され、児童施設に移ってからは、皆での食事が義務付けられた。
しかしながら、浮いていた僕にとっては、一人とあまり変わらない状況であったのだ。
それだから、僕が食事を楽しいと感じるようになったのは、サンと暮らし始めてからだった。
サンは家族の反対を押し切って、小さなアパートを借りてくれた。
その頃は、僕も辛うじて働けていたので、サンと折半して家賃を払い、一緒に暮らすことになったのだ。
サンからしてみれば、毎日鬱々と生きている僕が、いつ約束を破るか、心配だったのだろう。
鬱症状が日に日に悪くなっていた時期だ。
毎日のように死にたいと考え、その後にやってくる強い脱力感と虚無感。
そんなものと闘いながらのバイトをこなす日々に、僕の精神は悲鳴をあげていた。
毎度のことながら、サンは僕の状態を把握するのが上手い。
彼は大学を受験し、合格が決まっていた。
家を出るのにも、タイミングは良かったのである。
サンは常々家族とは上手くいっていなかった。
一番険悪だったのは、中学の頃だろうか。
元々僕のことを良くは思っていなかった家族と、彼は真っ向からぶつかってしまった。
僕の世間から貼られたレッテルは、13歳の子供には重すぎたのだ。
母親を亡くした哀れな子供、虐待を受けていた可哀想な子。
そして、人殺しの息子である。
被害者家族であり、加害者家族である僕の立ち位置は、当時ではあまり有り得なかったものだ。
最近では、家族内での殺しも増えてきているが、あの時はまだ、珍しいことだった。
周りは僕の扱いに困っていた。
当たり前だ。
憎むべき犯罪者の家族として見るべきなのか、憐れみ慈しむべき者として見るべきなのか、判断がつかないのだ。
中途半端で浮いてしまう僕を変わらずに受け入れてくれたのは、やはりサンだけだった。
けれども、それによって、彼自身にもレッテルが貼られてしまうのだ。
サンの家族は、それを嫌がり、僕とは付き合わないよう、再三に渡り、サンに告げていたらしい。
後になってサンから聞いたことで、当時の僕は知らなかったが、酷いことも散々言われたという。
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