SとKのEscape

Neu(ノイ)

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一章:SとK

仲直り 06

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ボクも慣れたもので、軽く首肯して返した。
もう次の授業が始まりそうなので、ボクは自分の席に戻って行くのだった。




 放課後を迎え、クロの家まで二人で向かう。
背中では、ランドセルが上下に揺れていた。

「今日は、母さん、仕事でいないんだ。サン君が来てくれて助かるよ。何しようか?」
「宿題、一緒にやろうか」

歩きながらも小首を傾げるクロを横目で捉え、ぼそりと答える。
クロは笑顔で頷いた。
クロの笑顔ほど珍しいものはない。
いつも陰鬱な顔をしている彼のことだ。
その顔が目に見えて解るほどに綻ぶことなど滅多にない。

「きょ、今日の、算数、教えて欲しい、な」

クロははにかみながら小さな声で呟いた。
あまり勉強が得意ではないらしいクロは、ボクと宿題をするのが好きなようだった。
教えるのは嫌でもないボクにとっては、珍しいクロの表情を見る良い機会であった。


 ボク達は勉強の話をしながら、アパートまで歩を進めるのだった。




 アパートに着き、見慣れたリビングに通される。
リビングには、ローテーブルが一つと座布団が置かれている。
ボクとクロは、隅に並んでランドセルを置いた。


 クロには自室というものがないらしい。
中から筆記用具と計算ドリルを取り出す。
ローテーブルにそれらを広げ、向かい合わせで座った。

「ねえ、クロ君。聞きたいことが、あるんだけど」
「なんだい、サン君? ぼ、僕、勉強は、解らないよ?」

鉛筆を手に取ろうとしているクロに、本題を切り出そうと声を掛ける。
クロの目は、検討違いな不安で揺れていた。
ボクは苦笑を返し首を左右させる。

「解っているよ、君が勉強が苦手だと言うことは。そうじゃなくて、その痣のことだよ」

かたん、と鉛筆が転がる音がする。
クロの顔は強張っていた。

「な、なんの、こと?」

上擦った声で、それでも惚(とぼ)けようとするクロをジッと見詰める。
クロは視線を逸らして俯いた。

「今日、着替えてる時に見えた。お腹に、殴られた痕があるよね? 誰に、やられたの」
「ちっ、違うよ、サン君! そ、の。僕、転んで、打った、んだ」

ボクの顔は見ないで、俯いたまま必死で弁解するクロの体も声色も、可哀想な程に震えていた。
ボクは彼に近付き、肩を叩いた。
クロの目が、ボクを捉える。

「ボク達は友達だろ? クロ君、君が困っているのなら、ボクは力になりたい」
「サ、サササ、サン君。……だっ、誰にも言わないで。約束して、誰にも言わないって」
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