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一章:SとK
仲直り 04
しおりを挟む確かに、彼の肉体では力も入らなければ、衝撃も吸収出来ないだろうと予測された。
ちゃんと食事を摂っているのか疑わしい程である。
「なら休めば良いんじゃないか? 君は良く見学しているだろ?」
「う、うん。それが、先生に怒られて。あまりにも見学が続くのは問題だと」
扉を開けつつ、視線だけ向ければ、クロは泣き出しそうな情けない表情で、俯いた。
腹の前で手を組んだり外したりと、落ち着きがないのはいつものことだ。
「そう。それは残念だったね」
「きょ、今日は、何をやるんだろ?」
廊下に一歩を踏み出す。
クロと並んで歩き、階段を降りていく。
「さあ。外だからドッヂボールとか? やることに何の意味があるのか、解らないが、学習要項である以上はやらざる得ないね。全く億劫だ」
「あれ、当たると痛いし、僕すぐに標的にされるから嫌いだ」
二人してぶつくさと文句を垂れる。
階段を降り切り、廊下を左に曲がれば、靴箱が見えてくる。
出席番号順に並んでいる。
ボクとクロは隣同士だ。
「君が避けないからだろう? 自業自得」
靴に手を伸ばし、侮辱の意を籠めた視線を隣に投げる。
クロも自分の靴を取っている。
「だって、サン君。怖くないの? 固いボールが飛んでくるんだよ。体が竦んで動かないんだ」
取り出した靴を地面に放り、上履きを脱いで靴箱に仕舞えば、放った靴に足を突っ込んだ。
クロも同じ行動を隣で取っている。
学年帽の鍔を掴み、くいくいと左右に微動させ、位置を調整する。
クロが靴に履き替えるのを見届けてから運動場に足を向けるのだった。
体育の時間は、あれだけ文句を言い合った結果の、予想に反したサッカーであった。
此処最近、流行っているようだ。
ボクには楽しさなど解る筈もないが、クロは他の競技に比べれば気に入っているようだ。
痛くなく怖くなく、出来る人間だけが目立っていれば、後は適当にどうにかなる。
クロにはもってこいだろう。
汗をかいた気持ちの悪い体を、体操着の襟の部分を掴んでパタパタと動かし、服の中に風を送り込みながら教室に向かう。
隣には定番のクロがいる。
クラスメイトに混じり、二人で話ながら教室に入った。
ホモだとかキモいだとか、陰口を叩かれていることに、恐らくクロは気付いていない。
いつも二人。
しかも、互いに友人が互いしかいない。
変な目で見られても仕方がないとも思う。
反面、変な目で見てる奴等の方が、よっぽど気持ち悪く思う。
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