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一章:SとK
喧嘩 02
しおりを挟む「明日、川路さんとデートするんです。其れを報告しようと思って。きっと川路さん、河東先生に言うか言わないかで悩んでるだろうから。負担になるのは良くないと思いました」
ボクの言葉を遮り、継生は捲し立てた。
暗にボクがクロの負担になっていると、そう言いたいらしい。
彼の話は続いた。
「川路さんは、河東先生に迷惑ばかりかけていて、自分は重荷だって、悩んでるみたいです。先生といることで、自己否定ばかりしている。其れって、良くないですよね?」
挑発だ。
これは継生からの挑発である。
喧嘩は売っても買わない、其れがボクの流儀である。
正直、頭にきたが耐えた。
顔がひきつりそうになるのを抑える。
「知っているよ、そんなことは。クロ君は、莫迦なんだ。どんなに説明しても解らない。ボクが何れだけ彼に救われたか……否、君に話すことではないな。すまない、忘れてくれ。何にしても、昔からそういう男なんだ。君は知らないかもしれないが、出逢った頃から鬱病予備軍のような奴だった。ボクに負い目を感じるのも昔から、ボクが医者になる前からだよ。ボクとクロ君は、君と違って、医者と患者という関係性だけで成り立っている訳ではないんだ。強い絆がある。誰にも負けないようなやつだ。ボクは、何があってもクロ君を守ると、そう誓った。クロ君も、ボクの為に生きると、そう約束したんだ。其れだから、本来彼に精神科での治療なんてものは必要ないんだよ」
喧嘩は買わないが、言いたいことは言う。
其れがボクの主義である。
気付くといつも長々と話していたりする。
継生は面白くなさそうに唇を尖らせ、回転椅子に座ったまま足を何度か揺すった。
イラついているかのようだ。
その様はまるで子供である。
其れでも言い返してこないと言うことは、ボクとクロの関係に口を挟めないと悟ったのか。
口を挟めないからイラつくのだろう。
ボクはもう一度、右手の人差し指で眼鏡を押し上げた。
微かに、かちゃ、と音を立てるのが聞こえる。
「其れで、明日何だって? 川路さんは世界一ノーと言えない人間なんだよ。重荷になっていないと良いけどね。まあ、良いさ。川路さんも大人だ。彼が決めたことにボクも口は挟まないよ、流石にね。君も楽しんだら良い。遊びなら気分も上向くかもしれない。けど、何があっても、彼に手は出さない方が良い。君の手には負えないから。これは忠告。もう一度、言うよ。川路 深黒には手を出さないこと。君の手に負えるような人間ではない。解ったね?」
釈然としない継生の顔を見てから、回転椅子を継生からデスクの方に向ける。
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