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一章:SとK
担当医 08
しおりを挟むそういう可愛いなら良いのではと、他人事のように思うが、本人からしたら切実なのだろう。
サンのことを意識しているとのことで、サンは非常に厭がっていた。
サンの場合、綺麗な顔立ちだと思うのだが、可愛いでなければ良いのだろうか。
継生が此方に気付き、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
どうぞ、と椅子を勧められ、継生の前に座る。
「こんにちは、川路さん。調子はどうですか? 今日は、河東先生のところが先でしたよね。どうでした?」
僕からファイルを受け取り、診察表を確認しながら問い掛けられる。
どうでした、と聞かれても、どう返したら良いのか解らない。
「え、と。あ、その、次から、家で診察、だそうです。僕は、病院が良い、んですが、サンく、河東先生は、家が良いみたいで。あ、やっぱり、お金、掛かるから」
俯き気味に顔を倒し、床を凝視する。
手を組み、落ち着きなく動かしながら、最終結果を告げた。
その間、視線は床に固定され、一度も継生を見ることはない。
何と言えば良いのか、継生の必要以上に干渉してくるところが、苦手なのだ。
勿論、彼は悪い人間ではない。
しかしながら、何故だろうか、近付いてはいけない、そんな予感があった。
嫌いな訳ではない。
彼の本心に触れることが、正直怖かった。
僕という人間に好意を示し、自ずから近寄ってくる人間など滅多にいない。
サン以外の人間との付き合い方が、解らないのだ。
「そうなんですか? 本当に先生と仲が良いんですね。羨ましいなあ。でも、河東先生は、川路さんのこと、独り占めしたいだけだと思います」
こういう発言も、苦手だった。
継生がどういった意味で言っているのかは解らないが、サンへのライバル心からか、僕には理解出来ないことを言ってくるのだ。
詰まり、サンは僕のことを好きなんだと、そういった内容である。
何か勘違いをしているようだ。
ばっ、と顔を上げて首を左右に振る。
継生の表情は良く見えないが、面白くなさそうなのは、語調からも伝わってきた。
「そ、それは、ないです。僕は、サン君の、お荷物ですから。僕なんかいない方が、よっぽどサン君の為になる、んです。解っては、いるんです。でも、サン君の優しさに甘えてしまう。僕は、本当に、サイテイです」
そう、解り切ったことだ。
サンの同級生にも、言われたことがある。
寄生虫、と。
自分でも自覚ぐらいしている。
思い出してなのか、ぐっ、と胸が詰まった。
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