SとKのEscape

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
17 / 97
一章:SとK

担当医 08

しおりを挟む


そういう可愛いなら良いのではと、他人事のように思うが、本人からしたら切実なのだろう。
サンのことを意識しているとのことで、サンは非常に厭がっていた。
サンの場合、綺麗な顔立ちだと思うのだが、可愛いでなければ良いのだろうか。


 継生が此方に気付き、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
どうぞ、と椅子を勧められ、継生の前に座る。

「こんにちは、川路さん。調子はどうですか? 今日は、河東先生のところが先でしたよね。どうでした?」

僕からファイルを受け取り、診察表を確認しながら問い掛けられる。
どうでした、と聞かれても、どう返したら良いのか解らない。

「え、と。あ、その、次から、家で診察、だそうです。僕は、病院が良い、んですが、サンく、河東先生は、家が良いみたいで。あ、やっぱり、お金、掛かるから」

俯き気味に顔を倒し、床を凝視する。
手を組み、落ち着きなく動かしながら、最終結果を告げた。
その間、視線は床に固定され、一度も継生を見ることはない。
何と言えば良いのか、継生の必要以上に干渉してくるところが、苦手なのだ。


 勿論、彼は悪い人間ではない。
しかしながら、何故だろうか、近付いてはいけない、そんな予感があった。
嫌いな訳ではない。
彼の本心に触れることが、正直怖かった。
僕という人間に好意を示し、自ずから近寄ってくる人間など滅多にいない。
サン以外の人間との付き合い方が、解らないのだ。

「そうなんですか? 本当に先生と仲が良いんですね。羨ましいなあ。でも、河東先生は、川路さんのこと、独り占めしたいだけだと思います」

こういう発言も、苦手だった。
継生がどういった意味で言っているのかは解らないが、サンへのライバル心からか、僕には理解出来ないことを言ってくるのだ。
詰まり、サンは僕のことを好きなんだと、そういった内容である。
何か勘違いをしているようだ。


 ばっ、と顔を上げて首を左右に振る。
継生の表情は良く見えないが、面白くなさそうなのは、語調からも伝わってきた。

「そ、それは、ないです。僕は、サン君の、お荷物ですから。僕なんかいない方が、よっぽどサン君の為になる、んです。解っては、いるんです。でも、サン君の優しさに甘えてしまう。僕は、本当に、サイテイです」

そう、解り切ったことだ。
サンの同級生にも、言われたことがある。
寄生虫、と。
自分でも自覚ぐらいしている。
思い出してなのか、ぐっ、と胸が詰まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...