SとKのEscape

Neu(ノイ)

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一章:SとK

担当医 04

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かと言って、サンがどんな攻撃を受けていたのか、実のところ、僕はあまり詳しくは知らない。
ただこの日は、たまたまその場に居合わせてしまったのだ。
運が悪かったのか良かったのか、何とも言えないが、僕にとって、サンと友達になれたことは、人生最大の幸せであることは間違いない。


 この日。
自分だけの木を探す、という生活の授業中に、自分の木を決められなかった僕は、放課後学校に残り、一人木を物色していた。
次の授業までには見付けておけ、と先生に怒られたのだ。
この頃から僕は、自分で決めるということが苦手だった。
自分の意思を持つことが、困難であった。
しかし、見付けないことには、また叱られてしまう。
嫌々ながら木探しを決行した訳だが、どうにもこうにも既に他の生徒の名前が書かれた札が架かっている。
自分だけの、という言葉通り、他の生徒と被ってはいけないルールである。
仕方なく、普段足を向けない旧校舎の裏に向かう。


 旧校舎は、既に使われていない昔の校舎で、老朽化の激しいオンボロな建物である。
誰も好き好んで近付こうとはしない。
僕としても近付きたくはないのだが、他に当てがなかった。
既に夕方近く、段々と薄暗くなっていく。
何処からか、カァー、カァー、とカラスの鳴き声も聞こえてくる。
正直、恐怖しかない。
震える足を叱り付け、どうにか校舎の裏側に回る。
道路との境目には石垣が建てられ、世間から遮断されたような錯覚を起こす。
そんな陰気な場所だが、草臥(くたび)れた小屋と、何本かの木が生えていた。
僕は木に近付いていく。
札は架けられていないようだ。
安堵に胸を撫で下ろす。
何の木かは知らないが、これで任務は果たせる。
手にしている横断バックの中から、自分の名前とクラスの書かれた札を取り出し枝に架けた。
任務終了である。
さっさと帰ろうと踵を返した時だった。




 物置として使っていたのだろうか、プレハブのような古い小屋。
所々穴も空いている。
其処から、物音が聞こえてきたのだ。
話し声と、何かを殴るような、そんな音である。
中に誰かいるのだろう。
此方には気付いていないようだ。
段々と話し声が大きくなってくる。
興奮しているのか。
言い争い、と言うよりかは、一方的に捲し立てている。
そして、鈍い音。
聞き覚えのある、嫌な音だ。


 何を、何をしているのだろうか。
見たくない、知りたくない、逃げ出してしまいたい。
ぐるぐると渦巻く気持ちの中で、聞こえてくる会話の内容から、クラスメイトだと察する。
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