SとKのEscape

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
8 / 97
一章:SとK

幼馴染 05

しおりを挟む


「付き合いが長いボクでさえ、君は手に余るんだ。当然、敷家君の手に負えないのは仕方が無いだろうね。彼もまだまだ新人だし、君は君で難解だ。どんな難しい数式を解くよりも、君の心を解く方が数倍難しい訳だ。結局、カウンセリングが物足りないんだろう? 君はボクのカウンセリングに慣れているからね。それから、投薬治療もしっくりこない。そうだろ?」

フン、と鼻で嗤(わら)うと、サンは僕の髪に触れた指で自分の鼻を擦(こす)った。
僕は中腰になっていた体勢を元に戻しながら頷いた。

「まあ、うん。薬は……楽になれるにはなれるんだけども。その、副作用がキツくて。カウンセリングも、何と言うか、うん。上手く言えないけど、何だか心配になるんだ。先生は凄く、好い人……だって思うのにね」

ゆっくりと椅子に腰を落ち着かせる。
サンに呼ばれてやってきた20代半ばの看護師が笑いを堪えるような顔でサンの後ろに着いた。
明る目の茶髪を後ろでアップにしている、少し化粧の濃い感じがする女性だった。
微かに香水の匂いが鼻を擽る。
慣れないからか、どうも落ち着かない。
診察中は、サンが気を利かしてくれ、二人で話せるが、診察の終わりには、当然看護師がやってくる。
いつものようにカルテを渡すサンを俯きながらも上目で窺う。
医師と二人で話すことなど例外なのであろう。
いつも看護師から好奇の目で見られてしまう。
それがどうにも辛い。
サンもそんな僕の状況を解っているのだろう。
看護師に顔を向けたまま僕に片手を振る。

「ああ、クロ君。もう行って良いよ。この後、精神科にも行くんだろ? 敷家君に宜しく伝えてくれたまえよ」

サンの言葉を聞いて、何故か看護師が吹き出している。
肩を震わせていた。
サンは面白くなさそうな仏頂面で、そう長くもない、全体的にツンツンとした印象を与える短い髪を片手で掻き上げた。
掻き上げると言っても、長さのない髪では滑稽に映るのだが、本人は気にした素振りもみせない。
昔はもう少し長かったので、その頃の癖が未だに抜けないのかもしれない。
幼少から見てきた彼の仕草である。
サンの髪が、僕は好きだった。
色素が薄く淡い茶色に見えるのは昔からで、染めている訳ではないらしい。
黒い髪しか持たぬ僕からしてみたら、羨ましいことこの上ない。
これまた無い物ねだりなのだろう。
サンはサンで黒い方が楽で良いと言うのだから、どちらにしても無い物ねだりなのだ。

「う、うん。な、仲が良いんだね、先生と。先生にも良く君のことを聞かれるんだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...