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一章:キチガイ×ヘンタイ
俺を変態だと吐かすお前の方がキチガイな件 07
しおりを挟むそれがヤケに淫靡に見えて「うわあ」と叫んで頭を抱える。
ごろん、と寝返りを打って雄仁から逃げる。
「さっ、さっさと着ろ! 着て下さい!」
もうあれこれ文句を言う余裕すらなくして懇願していた。
双眸を細め「可愛い」と囁いた雄仁の手に顔を挟まれ彼の方を向かされる。
細長く男にしては綺麗な指が頬肉をなぞっていく。
それ迄は指の腹でしか触れなかったのに対して、今回は爪先で柔く撫でられる。
「っ、っ、ん、……ゆ、うじ、ん、っ」
あの爪に触れているのだと考えただけで身体の奥底から熱が沸き起こり、掠れた声で助けを請うように名前を呼んでいた。
ぼやん、と視界がぼやけてはじめて、自分が涙目になっているのだと自覚する。
「……ねえ、ムウ。そんな顔したら、何をされても文句なんて言えないわよ? 解ってる? 蕩けきったイヤらしい顔してる。男を誘ってイケない人ね」
頬から離れた指に顎を上向かせられた。
頬を紅潮させている雄仁の方がよっぽど淫靡でイヤらしいと思ったが、言葉にしたら引き返せない状況になりそうで何も言えなくなる。
「他の誰にも、見せるなよ。俺にだけ見せて」
肩口に掛かった重さが雄仁のものだと認識したのは、泣きそうな声に懇願された時だった。
肩に乗る彼の頭が思った以上に小さくて、訳の解らない戸惑いを覚えた。
鎖骨に散らばる雄仁の髪が擽ったい。
縋るみたいに腕を掴む雄仁が、何故だか、儚い生き物に思えて堪らずに彼の頭を抱きかかえていた。
「ゆう、じ、ん。……ふく、服、着るんだろ。はやく、触らせろ、バカ」
自分の行動に真っ白になった頭が紡ぎ出したのは、何とも誘うような台詞で、口にしてから羞恥で一杯になる。
「ふふ、ムウったら積極的ね。ちょっと待っていて頂戴」
顔を上げた雄仁はいつも通りに笑っていた。
嬉し気な表情を浮かべる彼に騙された気分に陥り雄仁の頭を軽く叩く。
雄仁は笑い声を上げながら立ち上がる。
枕元で綺麗に畳まれている、昨日着ていたシャツを手に取り腕を通す彼を横目に上体を起こした。
ベッドの上で胡座を掻くと、ぎしり、と軋む音が聞こえてくる。
シャツにボクサーパンツと言う出で立ちで雄仁が隣に座ろうとするので、ぎろり、と睨み付けた。
「下は穿かねぇのかよ? なんつぅか、……エロいんだよ、お前。キチガイの癖に腹立つわ」
シャツの間を、ちらちら、と覗く黒のパンツから、スラリ、と色白な生足が伸びている様は、彼が美形なだけに変な気持ちになるのだ。
小首を傾げて雄仁をマジマジと眺める。
中性的な容姿で、パッと見ただけでは男か女か判断がつかない。
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