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一章:キチガイ×ヘンタイ

俺を変態だと吐かすお前の方がキチガイな件 03

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「お前もお、飲めよー? おら、やる」

ふはー、と缶から口を離すとローテーブルに置き、アルコールが回る頭で、雄仁が呑んでいないことに気付く。
ぐい、と今し方、自分の飲んでいた缶を雄仁に突き付けた。

「ムウ。アタシを酔わせて困るのアナタよ? それでもいいなら飲むけど」

困ったように眉尻を下げて目の前の缶を眺める雄仁の口から溜息が溢れ落ちる。

「あー? なぁんで俺がー、困んだよお?」

酔いで楽しい気分になっている俺はローテーブルに上体を預け、上目で雄仁を窺った。
彼は口角を上げて微笑すると、ムウ、と艶っぽい声で俺を呼ぶ。

「アタシ、ゲイなのよ。それでね、ついでに言うと、アナタのこと愛しているの。酔ったら自制がきかなくなるわよ? つ、ま、り、喰っちまうぞ、ってことだ」

んあー? と間抜けな音を発し、上手く回らない頭で言葉の意味を考えようとするも、すぐ近くまで雄仁の顔が迫ってきて、それどころではなくなった。
低い声が耳元でしたかと思えば、耳朶に生温い舌の感触を感じる。

「顔ー、近ぇぞお。ゆーじぃん、俺はー、女が好きだあ! お前、男じゃねぇかよー。んなキレーな面してえ、男だろおがー。でもお、ゆーじぃんはー、好きだぞお。お前、いー奴だかんなあ。てかー、なぁんで、そんな低い声ー、出んだよお。顔とのギャップー、半端ねぇぞー?」

顎を捕まれ上向かされる。
襲ってくる眠気に落ちてくる目蓋を必死で上げ、雄仁の言葉の意味も理解しないままで警戒心もなく、にへら、と笑い彼の肩を叩いた。

「ムウ。俺は男だぞ? 低い声ぐらい普通に出せるし、寧ろ此方が素に決まってんだろ。本当にお前、馬鹿だな」

眠たさにふわふわと意識に霞が掛かる中で、普段よりも低い女口調でもない雄仁の男らしい言葉使いに自然と笑みが浮かぶ。
口端の上がる唇に、柔らかな感触を感じた。
それが何かを認識する間もなく、俺は意識を手放していた。

「この状況で寝るとか、ふざけんな」

沈んでいく意識が最後に聞いた台詞は、なんとも恐ろしい低い声だった。


* * * * * *


 サワサワと頭を撫でられている感覚が俺の意識を浮上させていく。
薄っすらと双眸を開けると、其処はいつもの自分の部屋で、いつもと変わったところなどない筈なのに、ぼんやりとした頭は人肌の温もりを認識し、ゆっくりと隣を見た。

「っ、っ!? ゆっ、う、じん? なん、で、おま、はだ、か? つか、俺もかよ!? どんな状況だ、コレ」
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