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一章:親友の異変
光輝親衛隊 06
しおりを挟むいつも通り、王子様のように整った顔に表情を魅せることなく一人でいる榊がいた。
黒味の強い栗色の髪は、眉毛の少し下で整えられている。
耳を隠さない程の長さのサイドに、襟足に掛かる程度の後ろ髪は、さらり、と風に揺れていた。
「Oh! là,là(あらら/オーララ)、イケメンなのに勿体無いね。笑えばいいのに」
光輝に「あの一人でいる奴」と耳打ちされ、泰造は大袈裟な仕草で肩を上げる。
だろ、と相槌を打つ光輝と、ふと顔を上げた榊の目が合った。
じろり、と榊に睨まれてしまい、あれま、と光輝は苦笑を溢す。
滅多に感情を出さない榊にしては珍しいことであった。
婚約話は本当かもしれないな、と一人胸の中でごちる。
三人は何事も無かったように1組の前を通過し、教室まで辿り着くと同時にチャイムが鳴り響くのだった。
* * * * * *
放課後になり、今日は仲良しグループ全員で寮に帰れることとなった。
久し振りの6人での帰寮に健は大はしゃぎで一番前を歩いている。
嵐はそんな健の隣を弛んだ表情で死守していた。
可愛いモノが好きな嵐は、何かと健の傍に行きたがる。
和志がその後に続くが、その顔は不安気である。
好奇心旺盛でバカな二人は何をやらかすのか予想不可能なところがあり、ハラハラしてしまうのだろう。
そんな和志の隣で悠々と歩くのは泰造だ。
性格の違いなのだろうか、常に周りに気を配る和志とは対照的に泰造は我が道を行くタイプである。
そして一番後ろを光輝と誡羽で並んで歩いていた。
誡羽は俯き加減で視線を隣に向ける。
何処となくギクシャクしてしまうのは、いつも通りの光輝との距離の取り方がいまいち解らないからだろうか。
「誡羽。出来る限り一人にならないでな? 変な噂のせいで俺の元追っ掛け? 親衛隊みたいな奴等、また騒ぎ始めてて誡羽にも迷惑掛けるかもしれない。和志とお代官様も事情は知ってるから、俺がいない時は二人に頼って」
唐突に真剣な顔で光輝が切り出した内容に両目を瞬かせてしまう。
大袈裟だな、と思ったのが顔に出たのだろう。
光輝の美麗な顔に厳しさが滲んだ。
「お願いだ、誡羽。とにかく、お稚児ちゃんでもガキでもクラスの奴等でもいい。誰でもいいから一人にはならないでな?」
必死な形相で頼み込む光輝に肩を竦ませ苦笑してしまう。
「其処までする必要があるのか? なんだかスーパースターと付き合ってる気分だ」
「……そんなんじゃないけど。偶像に対する群衆の執着を甘く見ると痛い目をみるから。昔のことだけど、ガキも嫌がらせ受けてたんだ。巫山戯てるよな」
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