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一章:親友の異変
異変×噂=告白 12
しおりを挟む響からは極道の『ご』の字も感じられぬ程におっとりとしているが、芯はしっかりとしているのはだからだろうか。
「天星は、凄いな。僕は自分のことで手一杯で、好きとか考えてる余裕がないんだ。羨ましいよ」
「僕は何が誡羽君を縛っているのか、解らないけど。でも、僕なんかよりもスゴいと思うよ? だって、自分と向き合うのって大変でしょ。それでも、誡羽君は向き合うことに逃げてないって、僕はそう思うんだ。もっと自信、持っても大丈夫だよ」
ふんわりと、優しく微笑む響に、胸が締め付けられた。
見ていてくれているんだな、と思うと感情が込み上げてくる。
「あ、りがと。そんな風に言って貰えるなんて、考えたこともなかった」
「僕、家が極道だからさ。肉体的な強さも大事だけど、自分に負けない強さも磨けって、小さい時から言われてて。見ての通り、泣き虫でしょ、僕。弱いんだよね。そんな自分と向き合う強さもないんだ。だから、僕も誡羽君のこと羨ましいよ」
えへへ、と照れたように告げる響に、目頭が熱くなっていることは黙っていることにした。
きっと彼は、もらい泣きをして、止まらなくなってしまうだろうから。
こっそり目尻を拭い、もう一度「ありがとう」と伝えるのだった。
あの後、登校してきたクラスメイト達に驚きの眼差しで見られ、如何に自分が朝に弱いかを思い知った。
結局、光輝は授業が始まるまで机に伏せていた。
気になる思いはあったが、それでも誡羽は授業に集中するのだった。
光輝の態度に違和感を覚えながらも、やはりこの日も誡羽は、教室に居られなくなり、一限目が終わってすぐに図書室に向かった。
息苦しくなるのを、自分ではどうやってもコントロール出来ないのだ。
逃げるように、早足で廊下を進む。
光輝の噂があちこちから聞こえてきたが、それすらも気にならない程に、気持ちが重苦しい。
胸が押し潰されそうだ。
一階の図書室にまで辿り着くと、逸る想いを抑えて扉をスライドさせた。
中に入り、後ろ手に扉を閉める。
自然と息が口を吐いて出た。
少しずつ緊張も解れていき、誡羽は肩を撫で下ろし、テーブルの並ぶ閲覧コーナーまで歩く。
司書の松村は、大体10時頃にやって来て、図書室の扉を開ける。
準備室かこの閲覧コーナーの何処かに座り仕事をしているのだ。
今日は閲覧コーナーには見当たらない。
準備室か、とカウンターから準備室にと続く扉を叩いた。
「はーい、開いてるよ」
案の定、中から声が聞こえる。
誡羽はドアノブを回した。
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