親友ラバー

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
34 / 49
一章:親友の異変

異変×噂=告白 12

しおりを挟む


響からは極道の『ご』の字も感じられぬ程におっとりとしているが、芯はしっかりとしているのはだからだろうか。

「天星は、凄いな。僕は自分のことで手一杯で、好きとか考えてる余裕がないんだ。羨ましいよ」
「僕は何が誡羽君を縛っているのか、解らないけど。でも、僕なんかよりもスゴいと思うよ? だって、自分と向き合うのって大変でしょ。それでも、誡羽君は向き合うことに逃げてないって、僕はそう思うんだ。もっと自信、持っても大丈夫だよ」

ふんわりと、優しく微笑む響に、胸が締め付けられた。
見ていてくれているんだな、と思うと感情が込み上げてくる。

「あ、りがと。そんな風に言って貰えるなんて、考えたこともなかった」
「僕、家が極道だからさ。肉体的な強さも大事だけど、自分に負けない強さも磨けって、小さい時から言われてて。見ての通り、泣き虫でしょ、僕。弱いんだよね。そんな自分と向き合う強さもないんだ。だから、僕も誡羽君のこと羨ましいよ」

えへへ、と照れたように告げる響に、目頭が熱くなっていることは黙っていることにした。
きっと彼は、もらい泣きをして、止まらなくなってしまうだろうから。
こっそり目尻を拭い、もう一度「ありがとう」と伝えるのだった。


 あの後、登校してきたクラスメイト達に驚きの眼差しで見られ、如何に自分が朝に弱いかを思い知った。
結局、光輝は授業が始まるまで机に伏せていた。
気になる思いはあったが、それでも誡羽は授業に集中するのだった。




 光輝の態度に違和感を覚えながらも、やはりこの日も誡羽は、教室に居られなくなり、一限目が終わってすぐに図書室に向かった。
息苦しくなるのを、自分ではどうやってもコントロール出来ないのだ。
逃げるように、早足で廊下を進む。
光輝の噂があちこちから聞こえてきたが、それすらも気にならない程に、気持ちが重苦しい。
胸が押し潰されそうだ。


 一階の図書室にまで辿り着くと、逸る想いを抑えて扉をスライドさせた。
中に入り、後ろ手に扉を閉める。
自然と息が口を吐いて出た。
少しずつ緊張も解れていき、誡羽は肩を撫で下ろし、テーブルの並ぶ閲覧コーナーまで歩く。


 司書の松村は、大体10時頃にやって来て、図書室の扉を開ける。
準備室かこの閲覧コーナーの何処かに座り仕事をしているのだ。
今日は閲覧コーナーには見当たらない。
準備室か、とカウンターから準備室にと続く扉を叩いた。

「はーい、開いてるよ」

案の定、中から声が聞こえる。
誡羽はドアノブを回した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...