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一章:親友の異変
異変×噂=告白 11
しおりを挟むそして、誡羽は響の発したある言葉に意識を奪われる。
「おはよう、天星。噂って? さっきも廊下で光輝の話をしている子達がいたけど……。何かあったのか?」
手にしていた本に栞を挟み、机上に置けば響に問い掛けた。
響は困ったように眉尻を下げて、誡羽から僅かに視線を逸らす。
「誡羽君、知らないんだね。うーん、うーんとね。佐倉はデマだって言ってたんだけど。……堀中の従妹って知ってるかな? 彼女と佐倉が付き合ってるって噂になってて。昨日から学校中大騒ぎ、なんだよね。あっ、佐倉は違うって言ってたから、デマなんだと思う! 人の噂なんていい加減だしね」
気にしない方が良いよ、と癒しスマイルで響は説明してくれたが、誡羽は何故だか落ち着かなくなってしまう。
胸の辺りがザワザワした。
例の賭事と関係があるのだろうか。
自然と思考はそちらに傾いた。
無言になり考え込む誡羽に、響は苦笑を滲ませる。
まだ出会ってから数ヶ月しか経たないが、それであっても誡羽が真面目だということは良く理解出来た。
「そう言えばさ。誡羽君は恋ってしたことある?」
難しい顔をする誡羽を和ませようとしてか、不意に問い掛ける響は、真剣な表情である。
しかしながら、誡羽にしてみれば唐突過ぎる質問で、軽く吹き出してしまう。
「なっ、なななっ、何で?」
「急に変なこと聞いてごめんね。僕、恋したことないから。気になっちゃって」
そんな誡羽に微笑みを向けながらも、恥ずかしげに答える響を見て、誡羽は何となく察した。
「気になる奴でもいるのか? 僕も、恋とか良く解らないけど」
「うん。気になるって言うかさ。四六時中その人のことで頭が一杯なんだよね。今日は学校来るかな、とか。怪我はしてないかな、喧嘩してないかなって。ほら、真紀君不良だから」
「ああ、新城か。僕が言えた立場じゃないけど、あんまり学校来ないもんな。そっか、そういうの恋って言うのか」
響は片手で頭を掻いてはにかんでいる。
心なしか頬も赤かった。
誡羽もつられて恥ずかしくなり、下を向いた。
「うーん、恋なのか、解んないけど。ずっと心の中にいて気になるから、むずむずして。なんなのかなあ、って。こんなこと、龍君に相談するのも恥ずかしいし。ずっと一緒だと、逆に言えないもんだね」
龍君とは、クラスメイトの持宗 龍神(モチムネ リュウジン)のことだろう。
響と龍神は、家族ぐるみの付き合いで、生まれた時からの幼馴染みだと聞いた。
何でも、龍神の家は極道家業で、その側近が響の父親らしい。
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