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一章:親友の異変
異変×噂=告白 07
しおりを挟むそろり、と音を立てぬように、ベッドから降りる。
誡羽は枕元に用意していた制服に着替える。
胸ポケットに校章が印刷されている夏用のカッターシャツに、下は夏用に薄く加工された濃い緑色のズボンを履く。
夏以外では、上にズボンと同色のブレザーを羽織るようになっている。
首元には学年色のネクタイを締めるのだが、夏はノーネクタイである。
首元のボタンも付いていない形だ。
着替え終わった誡羽は、足音が出ないよう注意して健の部屋から出た。
和志は既に起きていたようで、リビングのソファーに腰掛けて朝のニュースを見ている。
「堀中、おはよう。朝、早いんだな」
「あれ、おはよう。珍しいね、誡羽君がこの時間に起きるなんて。他人の部屋だと落ち着かないのかな?」
後ろから声を掛けると、和志の首が此方に向く。
誡羽の姿を確認して、和志は首を傾げた。
「まあ、ね。健ちゃんの寝相、凄いな。今度から朝早い時は泊まろうかな」
「ああ、蹴られたり殴られたり乗っかられたり? 僕は一緒に寝たことがないから解らないけど。噂には聞いてるよ」
ソファーに近付きながら答える誡羽は苦笑を浮かべている。
納得してみせる和志に、今度は誡羽が首を横に倒した。
「噂?」
「去年、修学旅行で一緒の部屋だった子からの情報でね。あ、何か飲む?」
横までやってきた誡羽を見上げて、和志は立ち上がろうとするが、誡羽に止められてしまう。
「いや、大丈夫。僕、先に学校行こうかと思うんだ。やっぱり、光輝のことが気になるから」
「そっか。朝御飯はどうする? パンぐらいなら用意出来るよ」
キッチンに視線を投げる和志に首を振り、誡羽はソファーの横に立て掛けて置いてある自身のスクール鞄を掴んだ。
「お腹、空いてないから。昨日はありがとな。お邪魔様でした」
「いや、またいつでもおいでよ。健も喜ぶし」
「ああ。じゃあ、後で学校でな」
片手をひらりと翳し、誡羽は扉に向かう。
そんな彼の背中を見送り、和志はこっそりと溜め息を吐いた。
「理呼ちゃん、あまり無茶はしないでくれよ」
ぼそりと和志が呟いたことを、誡羽は知らない。
* * * * * *
話は昨日に遡る。
光輝が一限目の支度をしようとしていた時だ。
担任の流に肩を叩かれた。
この教師は、新任でオドオドとしたところがあるのだが、教師としての意地だろうか、頑張ってしっかりしようとする姿が見て取れた。
それはそれで微笑ましい。
人気はそれなりにあるようだ。
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