親友ラバー

Neu(ノイ)

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一章:親友の異変

異変×噂=告白 03

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噂の意味を考えろ、あわよくば、利用しろ、と。
そういうことなのだろう。
光輝の頭の中では、高速で色々な計算がなされているのだった。




 予鈴が鳴る音に、誡羽の意識は引き戻された。
気付くと教室の自分の席に座っている。
光輝が運んでくれたのだろう。
己の失態に顔をしかめた。
ちらり、と光輝の席を窺えば、彼は両手で頭を挟み込み、俯いていた。
頭でも痛いのか、と心配になるも、がらがらと扉が開き、担任の杉原 流(スギハラ ナガレ)が入って来たため、前を向く。


 流は今年赴任したばかりの新任である。
担当教科は国語だ。
高いとは言えない身長に、柔らかな物腰、優しそうな風貌をしている。
少し頼りないが、可愛らしい先生だった。

「おはよう御座います。朝のHR、始めようか。委員長、お願いします」

教卓までやってきた流は、名簿を置き、委員長の小野坂 悟理(オノザカ サトリ)を一瞥した。
悟理が号令を掛けるのと連動して、皆も動く。
その様が誡羽の気持ちを重くする。
嫌だな、と思う。
個性を圧し殺すことを強要されているように感じてしまう。
穿った見方だと、解ってはいるが、どうにか出来るのならば、不登校などしないのである。
何てことはない些細な違和感の積み重ねが、誡羽の胸を重苦しくしていた。
息苦しい。
自由になりたい、と暴れる自己を鎮める術など、誡羽は知らない。
ただひたすらに耐えようとするのだ。


 こうなってしまう原因が何であるのか。
誡羽には朧気ながらに見当が付いていた。
名前へのコンプレックスだ。
羽を誡(いまし)めると書いて誡羽である。
自分は縛られているのではないかと、いつしか思うようになり、自由への憧れも強く抱くようになった。
弟の由羽は、自由な羽と書くのに、自分はどうだ。
羽を縛られて自由に飛べない。
苗字は高く飛ぶと書くのだから、余計にその思いは強くなった。
自分だけが高く飛ぶことが出来ないのだ。


 そんな風に思うようになっていた。
自分の名前が嫌いで、嫌で、段々と閉塞感を覚えるようになった。
その結果、理由もなく教室から逃げ出してしまいたくなるのだ。
どうにかしたいと思えば思う程に、泥沼に嵌まっていく。
脱け出せなくなってしまう。
情けない。
それでも、誡羽には逃げることしか手段が思い付かないのであった。




 どうにか朝のHRを終えて、一時限目が始まろうとしていた時だ。
光輝が立ち上がり、教室を出て行ったことに、誡羽は気付いた。
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