24 / 49
一章:親友の異変
異変×噂=告白 02
しおりを挟むくすくす笑っていた響だったが、ふと眉間に皺を寄せ、音量を落とした。
光輝が真顔で尋ねれば、響は言い淀む。
「僕は、他人の色恋沙汰を噂にするべきではないと思うんだけど。誡羽君が耳にしたら、佐倉もやりにくいかもしれない、よね。堀中との関係も、あるし」
はっきりとは言わない響ではあったが、和志の名が出れば、何と無くは見当が付くようで、嫌な顔を全面に出すのだった。
「和志の従妹のことか? あの女、何をしてくれた」
「堀中の従妹と、付き合って、るんじゃないの? うちのクラスはまだ大丈夫だけど、他のクラスは凄い騒ぎだよ」
光輝の表情に、びくんと肩を揺らす響は恐る恐る告げて窓の方に視線を流した。
「わり、キョンちい。怖がらせたか。付き合ってねぇよ。まあ、良いか。向こうの狙いは解った。情報、あんがとさん」
「役に立てたなら、嬉しいよ。でも、噂って当てにならないね。ごめんね、変なこと言って」
「いや、助かったよ。マッキーとは仲良くやってんの?」
誡羽の腕を掴みながら響に問い掛ける。
マッキーとはクラスメイトの新城 真紀(シンジョウ マキ)のことである。
響とは今年度よりルームメイトになった間柄だ。
こくん、と響の首は縦に揺れた。
「なんとか。怪我、良くしてくるから、手当てとかしてるんだ」
「ほうほう、そら良かった。マッキー、不良だかんな。キョンちい怖がりだし、ちょい心配だったけど」
「うん。最初は怖かった。でも、意外と優しいんだよ、真紀君」
「そうかいそうかい。お兄さん安心したよ。じゃ、行くわ」
ふわり、と微笑む響の頭に、空いている方の手をぽんと置いた。
そうして、手を離せば、誡羽の腕を引っ張り、彼の席まで誘導するのだった。
誡羽を椅子に座らせ、光輝も自分の席に向かう。
カバンを机の横に掛け溜め息を吐き出す。
こくんこくん、と首が上下に揺れ動き、今にも頭を打ち付けそうな誡羽を遠目に眺める。
噂は誡羽の耳に入れるためであろう。
本格的に動いてきたようだ。
和志の従妹の堀中 理呼(ホリナカ リコ)と言う女は、非常に厄介な人間だ。
目的のためならば手段を選ばない。
彼女は、それを許されるだけの、地位も頭脳も容姿も、そして、人脈も持っていた。
公にはされていないが、前理事長の娘であり、彼の後を引き継いで小学五年生でありながら現理事長を勤めている。
彼女の狙いははっきりとしている。
光輝は如何にして行動を起こすべきか、頭を悩ませていた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる