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一章:親友の異変
異変×噂=告白 01
しおりを挟む【異変×噂=告白】
次の日。
朝。
寝起きの悪い誡羽を起こすイベントを終えた光輝と、未だにぼんやりとしている誡羽は食堂で朝食を食べてから、学校にと向かっていた。
ちらちらと降り掛かる、生徒達の視線に、まだ誡羽は気付いていない。
欠伸を噛み締める。
霞の掛かった頭が思考を邪魔して、始終無言である。
光輝は誡羽の隣を歩きながら苦笑いを溢した。
いつもならばいる筈の仲間は生憎と用事があり、今日は二人きりの登校である。
因みに、泰造は生徒会、嵐はサッカー部の朝練、和志は不明、健は生物部の当番、だ。
誡羽が電信柱にぶつかりそうになるのを、寸でのところで手を引っ張り回避しつつ、光輝はようやっと教室に辿り着く。
光輝は教室の前で立ち止まり、誡羽の両肩を、ぐっと掴み、揺さ振った。
「誡羽くーん! おっきしましょうね」
未だに、ぼぅと一点を見詰めたままの誡羽をゆさゆさと揺する。
「うぅ、こ、う……き?」
「うん、光輝。もう学校。教室着いたよん」
おもむろに視線を光輝に遣り首を傾げる誡羽に、光輝は状況を説明した。
「きょー、しつ? がっこ……あさ?」
「そう、朝。起きて、誡羽」
誡羽はぐるりと辺りを見渡し、また首を傾ける。
寝起きは相当悪いようで、光輝も困り果てた顔で自身の髪を掻いている。
「お、きて、る。がっこ、きょーしつ、はいる」
単語を並べたかと思えば、誡羽は、くああぁ、と欠伸を溢し、教室の扉を開けようと手を伸ばした。
「えー、起きた? 誡羽、入るのは良いけど、寝惚けて席間違えんなよ?」
瞼が半分落ちたままの誡羽を疑わしい顔で見ながらも、光輝は誡羽を見守る。
がらり、と扉が横にスライドし開け放たれた。
誡羽は覚束ない足取りで教室に足を運ぶ。
「あ、おはよ。誡羽君! て、今日もおねむみたいだね。佐倉もおはよ!」
「おう、キョンちい! おはようさん。毎度のことながら、寝起きの悪さに感服、だな」
扉のすぐ近くの生徒が気付き、声を掛けられる。
彼は、天星 響(テンセイ ヒビキ)と言う。
キョンちいは光輝独特、響のあだ名である。
小さいキョンシーという意味らしいが、何がキョンシーなのかは謎である。
響もまた幼等部組であり、幼い頃からの知り合いだ。
響の机にぶつかりそうになる誡羽を引っ張り回避させる光輝を眺める響は心配そうである。
「そうだね、選手権があったら出れるかも。佐倉も大変だな、色々。なんか噂、凄いよ?」
「噂? どんなのよ? 俺、知らん」
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