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一章:親友の異変
謎の賭事、光輝の謎 04
しおりを挟むふと、光輝と和志が静かだな、と思い、誡羽は二人に視線を向けた。
椅子を引いて、泰造の後ろで何やら話している。
二人共難しい顔をしている。
さっきのことだろうかと考えていると、不意に光輝と目がかち合った。
目を瞬かせる誡羽。
やましいことなどないのだが、何故だか目を伏せてしまう。
気まずい気持ちになる。
「なあに、誡羽君。照れちゃって、かあいいんだからっ!」
きゃっ、とどこぞのオカマのようにしなしなくねくねとした動きで手を振っている。
始まったようだ。
光輝はこうやって人格をよく変える。
遊んでいるのか、わざとなのか、本気なのか、何かの障害なのか。
全く解らない。
こればかりは、付き合いの長い和志でも理由は知らないようだった。
一度こうなると手が付けられない。
面倒の一言に尽きた。
誡羽はあからさまな溜め息を吐く。
「あーっ! 誡羽にいたん酷い! 溜め息吐いたー」
今度は幼児だろうか。
表情も幼い。
ぷくぅ、と頬を膨らませている。
先程まで和志と話していた時の深刻な顔との差が激しい。
「うざい。やめろよ、光輝」
「はは、こうなったら無理だよ、誡羽君。止まるまで耐えるしかないね」
慣れている分、流石の落ち着き払った態度である。
和志は椅子を戻して頬杖を着いている。
可笑しそうに目が細まっていた。
「けど、堀中。きもいだろ、どう考えても」
「でも、誡羽君。一々付き合っていたら、こっちが疲れるだけだよ?」
頬杖を着いた和志にくすくすと笑われる。
しかし、和志の言う通りではある。
既に誡羽は、疲弊していた。
光輝のこの可笑しな現象は、三ヶ月も見ればお腹一杯だ。
「佐倉の兄ちゃんは、昔っからこうだよ。俺とルームメイトだった時よりは、頻度減った気もするけど。まっ、これが俺の佐倉の兄ちゃんなんだけどな!」
いつの間にかお茶を啜りながら、健が話に加わった。
にっと良い笑顔で言い切る健は、相当光輝のことが好きなのだろう。
健と光輝がルームメイトだったのは、小学四年だったか。
「それなら、幼等部で僕と出会った時からこうだよ。カリスマ性と異常性の絶妙なバランスが光輝の人気の秘訣だと思うけど」
幼等部ならば3歳か。
相当な年月、和志は苦労してきたんだな、と自然と哀れむ目を彼に送っていた。
誡羽は三ヶ月でもう嫌なのだ。
ある意味、和志は尊敬に値するだろう。
「何だよ、皆してひっでぇな。俺のこれは、バランスを図ってんの。自然現象だ。誡羽もきもいとか言うな、コラ」
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