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一章:親友の異変
謎の賭事、光輝の謎 01
しおりを挟む【謎の賭事、光輝の謎】
リビングに戻り、光輝と並んで腰を落とす。
光輝は何処か落ち着きがない様子だ。
膝の上に肘を着き、上体が気持ち前に倒れている。
指を組んで遊ばせていた。
誡羽はそんな光輝を横目に背をソファーに預ける。
光輝が話すのを待っていた。
なかなか話始めない光輝であったが、おもむろに口を開く。
「誡羽。俺、もしかしたら、転校するかもしんねえ。まだ解んねぇけど」
「は? どういうことだよ?」
思ってもみなかった台詞に唖然とする。
誡羽は目を見開いて光輝を伺った。
光輝は眉間に皺を寄せ、苦々しい顔で首を左右に振る。
「あー、なんつぅかな。賭みたいな。うん、賭に負けたら転校することになる感じ? 立場上逆らえなくてさ」
「賭って、どんな賭だよ。堀中の従妹と賭をしたのか?」
首を傾げる誡羽に、光輝は困り顔で自身の髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜている。
「内容は言えないんだ。わりぃな。和志の従妹、ちょっと偉い立場にある奴でさ。兎に角、賭に勝てるように頑張るわ。誡羽も応援してな」
「其れは構わないけど。大丈夫なのか? 折角、仲良くなれたのに」
眉を潜める誡羽に、光輝はふわりとした笑みを向ける。
ソファーから立ち上がり誡羽と向き合えば、大丈夫、と根拠のない自信を覗かせて頷いた。
「誡羽は、俺がいなくなったら、寂しい?」
「当たり前だろ。最初は、まあ嫌われてたような気もするけど。光輝は親友だろ? 寂しいに決まってる」
深刻な会話なのにも関わらず、何故か嬉しそうに含み笑いをしている光輝に、怪訝な視線を送りながらも、力強く首肯する。
「サンキュな。俺も、誡羽とずっと一緒に居たいよ。話は其れだけ。食堂行こうか」
くしゃ、と髪を撫ぜられて、誡羽は擽ったそうに身を竦ませた。
そして、光輝は誡羽に背を向ける。
「皆には、言わないのか?」
誡羽は立ち上がりながら、問い掛ける。
誡羽が立ち上がるのを確認し、光輝は歩き出した。
「いや、まだ言わない。誡羽も内密にしておいて。まあ、和志には遅かれ早かれ知られるんだろうけどさ」
「ん、解った」
誡羽も光輝の背中を追い掛けるようにしてリビングを抜ける。
そのまま無言で部屋を出ると、施錠を済ませ、二階にある食堂にと向かうのだった。
食堂は、二階の一角にある。
寮生活の者が多いからか、結構な広さだ。
一年生だけの寮棟ではあるが、其れでも流石はマンモス校と言うことなのだろう。
全ての施設が、誡羽の想像を上回る豪華さであった。
中等部から入学した誡羽も、そろそろ慣れてきた頃ではある。
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