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一章:親友の異変
自室集合 06
しおりを挟むそんな健を愛しそうに見詰める和志が、誡羽には印象的だった。
そうこうしている内に、健がゲーム機を片付け、さて何をしようかとなった時だ。
インターホンが鳴る。
誡羽が立ち上がり、リビングから廊下に続く扉横の壁に着いている受話器を上げた。
カメラ付きのインターホンである。
画面には光輝の姿が映し出されていた。
「今開けるよ」
「おう、頼むわ」
軽く言葉を交わし、玄関まで向かう。
鍵を解除して扉を開けた。
疲れた表情で、それでも笑顔をみせる光輝が片手を挙げる。
「ただいま、誡羽。和志とガキもまだいんの? チョー疲れたんだけど」
「お帰り、光輝。ああ、ゲーム片付けたとこ。光輝ゲーム強いんだってな。健ちゃんが言ってた」
リビングに向かいながら、何とはなしに誡羽が聞くと、光輝は頭を掻いて小さく笑った。
光輝の肩でスクール鞄が揺れている。
「強いっつぅか。まあ、コツさえ掴めば楽勝だな。最近はやってねぇけど。なぁに、やりたくなった?」
悪戯に笑い掛けてくる光輝に首を振る。
ドアノブに手を掛けた。
「全然出来なかったよ。僕には向かないみたいだ。光輝は何でも出来るんだな、って思っただけ」
「見直した?」
「バカか。遊びだろ? 見直さないよ」
扉を開けると、和志が光輝に向けて片手を挙げた。
光輝も片手を挙げると、ヒラヒラと左右に振る。
健は、タッタッ、と掛けてきて、ぼすん、と光輝にタックルをかます。
「おっ帰り! 任務、無事に遂行したよ。カイっちは守った!」
「おう、ご苦労さん。サンキュな、ガキ。和志もわりぃな。助かった」
ニッコニコな顔で光輝を見上げる健は、小型犬のようだ。
159cmと小さな背も相俟って、誡羽の中で健へのイメージは小型犬で固まりつつあった。
光輝は健の髪を手でぐしゃぐしゃにする。
和志を仰ぎ見れば、光輝は健から体を離し、和志に近付いた。
「いや、元はと言えば、理呼ちゃんの我儘だからね。此方の方が申し訳ないよ」
「本当だな、和志。何なんだよ、あの女。マジで疲れたんだけど。お前の従妹でなきゃ、泣かしてんぞ」
光輝は和志の背中を、ぼすんと叩き、機嫌の悪い顔をみせる。
「理呼ちゃん、何だって? ろくでもない要求、された?」
「解ってんなら聞くな。どうせ本人から聞くんだろ? 此処では言いたくねぇから、彼奴に聞いて」
そんな光輝を目にし、和志は苦笑を浮かべながら額に手を当てる。
窺うようにして光輝を見るも、光輝は首を横に振った。
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