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一章:親友の異変
自室集合 04
しおりを挟む健が配線をセットし終えると、コントローラーを手渡される。
レースゲームのようだ。
健から一通り説明を受けるも、ちんぷんかんぷんだった。
「僕はこういうの向かないみたいだ。堀中、交代しよう」
二回やって、二回とも惨敗。
肩をすくませ、自分の持つコントローラーを和志に手渡す。
「ああ、そうだね。健はバカみたいに強いから、初心者には勝てないよな」
「バカってなんだよ! オレ、まだ佐倉の兄ちゃんには勝てないんだ。もっともっと強くならなきゃいけないんだ」
ぶすぅ、と健の頬が膨らんだ。
しかし、真剣な顔になると、コンテニューを押した。
「光輝、ゲームするのか? 見たことないけど」
驚いた顔を見せる誡羽に、健はにしし、と悪戯に笑う。
「今は時々しかやんないけど。四年生でルームメイトだった頃は、毎日のようにやってたんだ。かなーり強いんだよ!」
誇らし気に語る健は、本当に光輝を慕っているのだろう。
何処と無く微笑ましく思う誡羽だった。
「堀中は、光輝と何して遊んだりしてた?」
何気なく和志に尋ねる。
彼は真剣な顔でテレビと向かい合っていた。
画面では、熱いカーレースが繰り広げられている。
「ん? そうだなあ、光輝は変わってたからね。ヒーローごっことか、好きだったな、彼奴。今でもヒーローものは好きみたい」
コントローラーを操りながら、和志は思い出を辿るように目を細めた。
くすくす、と笑う和志を見て、誡羽も噴き出す。
「ヒーローものって、何とかレンジャーみたいなのだろ? 流石は光輝と言うか」
「ヒーローは永遠の憧れだよ!? やっぱり、レッドが一番カッコいい!」
瞳をキラキラ光らせて話に乱入してきた健は、相当ヒーローものが好きな様子だ。
光輝と好みが似通っているらしい。
兄弟の契りを交わすだけのことはある。
「因みに、佐倉の兄ちゃんもレッド推しなんだ! 二人は誰が好き?」
もう顔がニッコニコな健は、画面そっちのけで此方を伺っている。
その隙を見逃さなかったのは和志である。
一瞬の余所見。
されど、その一瞬が勝敗を決めた。
「あーっ! ずっるいぞ、和志! くっそー、もう一回だ、コノヤロー!」
「余所見する方が悪いだろ? ゲームはもうおしまいにしよう。もうすぐ光輝も帰ってくるし、誡羽君もゲームばかりじゃ、つまらないだろ」
ぷんすかと怒りに任せてコントローラーを上下左右に振り回す健に、和志は苦笑を滲ませるも、暴れる彼の頭をポンポンと叩き、そして、健の柔らかい髪の毛に指を絡ませるようにして撫でていく。
まるで、犬と飼い主である。
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