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一章:親友の異変
罪悪感 01
しおりを挟む【罪悪感】
彼は、全校生徒の憧れだ。
100人が100人、彼のことを知っている。
幼等部から大学部までエスカレーター式の男子校、清勝学園に於いては、必然的に幼い頃からの顔見知りが多い。
それに加え、佐倉 光輝はカリスマだった。
伝説の男なのだ。
全国模試では常にトップをキープ。
運動神経は抜群。
容姿も整っているとなれば、知らない者などいない。
そんな彼が、親友に選んだのが、この平凡を地でいく高飛 誡羽なのである。
誡羽とて、不細工ではないが、かといって、モデルや俳優になれる程の容姿かといえば、残念ながらそうではない。
言うなれば普通である。
色素の薄い茶に近い黒髪は、日本の学校では目立ちはするが、それだけである。
学力も悪くなければ良くもない。
運動部に所属はしているが、レギュラーではない。
本当にザ・平凡なのだ。
そんな平凡の中の平凡である誡羽を、何故にカリスマ光輝は親友に選んだのか。
誡羽本人だけではなく、まさに全校生徒の疑問の的であろう。
そう思うからか、不登校という罪悪感からか、視線が怖かった。
光輝の背中を追い掛けながら、悶々とした気持ちを隠せないでいる。
掃除場所に向かう生徒と擦れ違う度、掃除をしている生徒の視線を感じる毎に、やるせない想いはじんわりと広がっていく。
唇を噛み締めて俯く。
拳を握り込んで、動きたくないと訴える足を必死で動かした。
「誡羽。だいじょぶ? もう少しだから……おぶってあげましょうか?」
不意に光輝の顔が振り向いた。
歩調が緩まっている。
腰を捻り無理に顔を向けるのが辛かったようで、結局は隣に並んだ。
誡羽を心配そうに窺い、口が「が」を作ったところで止まった。
頑張れ、と言いたかったのだろう。
一瞬考えてから、ニッと悪戯に口端を上げて笑んだ光輝は、ふざけた口調でおぶると宣った。
光輝なりの気遣いなのだろう。
頑張れ、という言葉は、相手を思いやっているようで、その実、残酷な言葉だ。
光輝は、それを解っている。
言い直した言葉はふざけているが、無性に嬉しかった。
「バカ光輝。幼稚園児じゃないんだ。自分で歩けるよ」
光輝の背中を軽く叩く。
所属する中1-3HR(中等部一年三組)の教室はすぐ其処だ。
大丈夫だと笑ってみせた。
「そお? 残念。おんぶしてみたかったのにー」
光輝は首を傾げ、さも残念だといった風情で唇を尖らせているが、安堵したのだろう、廊下を進む歩調が速まった。
時間が押しているのだ。
「ご、めんな、光輝」
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