親友ラバー

Neu(ノイ)

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序章:プロローグ

図書室日和 01

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【図書室日和】


 空調の利いている図書室は、一年通して居心地が良い。
勿論、教室にもエアコンはある。
私立を名乗っている、幼等部から大等部まで完備されたマンモス校は、伊達ではないらしい。
何処もかしこも手の行き届いた施設は、贅沢以外の何物でもなかった。


 蒸し暑そうな窓の外で、蝉が鳴いている。
命を燃やすその様が、何故だか羨ましく思えて仕方がない。
自分は己の状況すら把握出来ずに、ただ居心地の良い場所に逃げているだけなのだ。
手元の書物に目線を落とし、溜息を吐き出す。


 甲高く響く蝉の音に混じって、生徒の掛け声が聴こえてくる。
体育の授業をやっているのだろう。

いちに、さんしー!
ごおろく、しちはーち!

知った体育教師の声に続いて、声変わり前の、まだ高い声色が何重にもなってやってくる。


 五時間目が始まったばかりの昼下がり。
授業に出ることなく図書室で暇を持て余していた。
不良でなければ、虐めも受けていない。
クラスに馴染めないといった事実も一切ない。


 それなのに、体が拒否する。
嫌なものなど何もない筈なのに、意思は教室を嫌がった。
このままで良い訳がない、と焦れば焦る程に、自分が解らなくなる。


 彼奴ならば、同じ状況に陥っても、何の苦労もなく乗り越えるのかもしれない。
ふと、そんな考えが過(よぎ)る。
親友になって二ヶ月が経とうとしているが、未だに掴めない奴。
其が、佐倉 光輝(サクラ コウキ)だ。
クラスメイトでもありルームメイトでもあるこの男は、高飛 誡羽(コウヒ カイハ)の目には完璧に見えていた。
頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗、器用で社交性も有る。
難点と言えば、人格破綻者だと言うことだけだ。
あの波打つように変化する口調や態度には着いていけないこともしばしばあるのだが、それ以外は申し分のない男なのだ。
聞いた話によると、小等部時代にはカリスマと呼ばれ、数々の伝説を残しているそうだ。
そんな彼ならば、と誡羽が思ってしまうのも無理はないだろう。


 顔を上げ背後の壁時計を仰ぎ見る。
まだ授業は終わらない。
誡羽は開いたままの本を閉じて立ち上がる。
準備室に居る司書の元へと向かった。
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