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一章:好きです、先輩
好き過ぎて 04
しおりを挟む暫時、何を要求されたのか理解出来ずに呆然と安月を眺めていた。
左手から彼の右手が外れ、その手は安月自身の下唇まで伸びていく。
人差し指でトントンと其処を叩きながら首を傾ける仕草に意味を漸く理解し、彰治は咄嗟に何か怒鳴ろうとした。
だが、言葉にはならず口唇をパクパクと開閉させることしか出来ない。
「今日、俺。府末さんの邪魔にならないように一人で頑張ったんっすよ? ご褒美で飲みに行く約束だったのに、行けないんですよね? だったら替わりのご褒美、欲しいっす」
安月の言うことは正論で、更には仕事の終わらない彰治を手伝うとまで言ってくれているのだ。
此処で要望に応えなくては男が廃ると言うものだ、と彰治は男らしく腹を決め小さく頷きを返す。
離れていった片手がいつの間にか戻ってきて、また繋がれた。
握られた両手を、ぎゅう、と持たれ、心臓が煩く高鳴っている。
「目、瞑れよ。こ、今回、だけだぞ? 特別、だからな? お、お前が頑張ったから、ご褒美で。それに、手伝ってくれるから、お礼で。それ以上の意味はねぇぞ?」
もごもごと口籠る彰治に安月は心底嬉しそうに顔を綻ばせて首肯を示した。
「勿論、わかってますよ。ハイ、どうぞ」
綴じられた瞳にもう逃げられない、と彰治は深呼吸を一つして、そろそろと安月との距離をゼロに詰める。
唇が軽く触れたのは安月の頬で、正直、彰治にはそれが限界だった。
ちう、と一瞬の接触で離れていったことに安月は不満の色を顔に浮かべながら眼を開ける。
「もっ、これで勘弁してくれ」
体躯を後ろに反らし逃げを打つ彰治は握られたままの手を捩って安月から離れようと藻掻く。
逆にその手を安月に引き寄せられ、片手が首の後ろに回された。
「駄目っすよ。ちゃんとコッチにしないと、ご褒美にならないでしょ?」
もう一回、と額を合わせた状態で囁かれ目を見開く彰治に「それにさ」と安月は言葉を続けていく。
「そんな可愛い反応見せられたら我慢とか無理に決まってんでしょ。俺、本当に府末さんのこと好き過ぎて困ってんですよ。もうずっと、何年もアンタのことが頭から離れないの。どうしてくれるんっすか?」
何年も、という単語に頭の中で浮かんだ疑問符が形になる前に、彰治の唇は安月の舌に舐められており、その衝撃に疑問など吹っ飛んでしまう。
「……っん、ぅ、ンン、っ、ッ」
重なってきた柔らかな皮膚の感触に逃れようとするも、首に回されている手で顔を固定されていて逃げ場はなかった。
下唇に軽く歯を立てられ思わず小さく口を開けると、其処から、ぬるり、と安月の舌が入り込む。
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