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一章:覚醒した悪魔
エスの目覚め 02
しおりを挟むカメラがついているインターホンは、顔を認識し自動で門の鍵が外れる。
呆気に取られて茫然と立ち尽くしている三條を置き去りに中へと入って行く。
慌てて後を追ってくる気配に笑みが溢れた。
100m程のコンクリートで舗装された道を歩く。
周りは見事な日本庭園になっており、小川のせせらぎが聞こえてくる。
奥にある池からは添水の鳴る音が響いている。
引き戸の扉を開ければ、玄関口に着物姿の母が立っていた。
びしり、と伸ばされた背筋に感情の籠らない冷たい顔立ち。
美しいが何処か冷たさを感じる女性、それが純の母、彩菜(アヤナ)である。
「お帰りなさいませ、純さん。そちらのお方は?」
彼女の凍てついた視線が純の後ろに立つ三條に、すっと向けられた。
彩菜に見惚れ、照れたように俯く彼を目に、内心嗤いが止まらない。
女慣れしていないようだった。
「只今帰りました、母上殿。此方は副担任の三條先生ですよ。僕がお呼びしたのです。色々と相談がありまして、ね?」
クスリ、と小さく笑い片手で口元を隠す。
さらり、と髪が一房頬に落ちた。
含みを持たせた言い方をしたのは、彼女にこの男が新しい玩具なのだと伝える為だ。
「は、初めまして! 三條と申します!」
「そうですか。わざわざお越し下さいまして恐縮で御座います。わたくし、庭のお手入れがありますので、失礼致しますが、何かありましたらお呼び下さいまし。刀次郎さん、いらして?」
深々と頭(こうべ)を垂れる三條を一瞥し、彩菜は家の中に向かい、最近やって来た純のお役係を呼ぶ。
「お呼びですか、姐さん」
奥から音もなく現れたのは、背の高い男、豆屶 刀次郎(マメナタ トウジロウ)である。
右の頬には大きな傷があり、彼の厳つい顔を更に威圧的に魅せている。
銀フレームの眼鏡にオールバックというスタイルは、彼がこの家にやって来てから2年程、変わることがない。
微かに彼の吸う煙草の香りが漂ってきた。
「純さんのお客様です。わたくしは庭の手入れをしたいので、お茶の用意をお願い出来まして?」
「畏まりました。姐さん、帽子と腕カバーをした方が良いんじゃあないですかね? 折角の綺麗な肌が焼けちまいますぜ」
あら、と溢しながら口元を片手で覆うと、母は履いていた草履を脱ぎ始める。
「うっかりしておりました。刀次郎さん、感謝致しますわ」
薄っすらと笑みを浮かべ、彩菜は自室に向かうのだろう、小幅で家の奥にと行ってしまった。
「豆屶、例の部屋、綺麗にしてある? お茶の用意が出来たら、其処に運んでくれるかな?」
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