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二章:訪れた変化
恋をした場合(2)03
しおりを挟むだからこそ、神はフィンを僕に与えたのだろう。
どんなに焦がれても、応えてはならない相手だ。
フィンの指が皮膚を辿る度に湧き上がる悦びに、僕は自覚するしかなかった。
もう誤魔化すことなど出来ないところまで膨れ上がっていた。
(こんなにも愛しくて恋しいのに、応えられないなんて……。嗚呼、主よ。罪深い僕を、どうかお赦し下さい。決して応えることは致しません。心の中でだけ、ひっそりと想うだけで良いのです。――彼を恋慕することを、どうかお赦し下さい)
神に祈る資格すらないのかもしれない。
だが、愚かな僕は祈ることしか知らなかった。
頬と切れた唇の処置を終わらせたフィンに、他に何処を殴られたのかを問われ、腹部と肩に暴行を受けたと答える。
「服、脱いで」
短く放たれた台詞に「うん」とは言えなかった。
待って下さい、と首を振り拒否を示せば、フィンの口から溜息が落ちる。
「脱いでくれないと手当てが出来ない。別に盛ったりしないから」
先程の僕の言葉を返し、見当違いなことを真面目に告げる少年の髪を掴んだ。
今にも足首まで続く服の裾に手を伸ばしそうなフィンの動きが止まる。
「こ、これ! 繋がっているので、ほとんど裸になってしまいます。こんな屋外ではしたない姿を晒すだなんて、嫌です」
涙目を向けた僕を、フィンは笑った。
額に柔らかなものが触れる。
彼の唇だと気付き、上擦った声で「フィン君!」と名を叫ぶ。
額に両手を当てガードすれば、更に笑われた。
「大丈夫。車の中は屋外じゃないし。誰も見てないよ。薬を塗るだけだから。ね?」
優しい声音で耳元に囁かれると、僕の意思は、ぐらり、と揺れてしまう。
「す、すぐに、終わらせて下さいよ?」
りょーかい、と口にするフィンの手が長い裾をたくし上げ、首から布が抜けていく。
中に着ている薄い衣も、腕を抜かれ首のところまで脱がされた。
素肌が外気に触れ体躯が微動する。
下着姿でいるのが恥ずかしく、僕は視界を閉ざした。
「ミル。こんなにガリガリで大丈夫? 骨、浮いてる」
ひゃう、と変な声が飛び出たのは、フィンの指が肋を辿ったからだ。
擽ったくて身を捩ると指は下に降りていき、腹部に辿り着く。
「俺、もう少しふっくらしてた方が好きだな。ただでさえガリガリなのに、教会の食事じゃ精も出ないでしょ。家に遊びにおいでよ。一緒にご飯食べよう。母さんが喜んで作ってくれる。ミルのこと大好きだからさ、あの人」
薄っすらと開けた目に入るフィンは、優しい顔で家族の話をしていた。
薬を纏った彼の指が変色する肌を撫でる。
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