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一章:恋に堕ちた悪魔の子
看病をする場合 03
しおりを挟む優しく丁寧に、ミルの肩を撫でた。
ミルは僅かな動きで首を振る。
否定したいようだ。
「ちがっ……ぅ。フィン、く、んは……ぼ、っくと、同じ、だから。まも、りた……い」
ぐっ、と俺の袖を引っ張るミルの目は、潤んでいた。
其れが、熱によるものなのか、想いが昂ってなのかは、俺には解らなかった。
「全然、違うよ。俺とお兄さん、何処が一緒なの?」
「ミ、ル……です。名前、で、呼んで、下さい。ぼく、は……異端児、なんで、す」
苦しそうに顔を歪めながらも、ミルは必死で訴えてくる。
が、俺は納得出来なかった。
「ミルは、異端児じゃないよ。髪だって、瞳だって、皆とおんなじだ!」
肩に置いた手が、上に移動し、ミルの髪を掴んでいた。
感情が昂って止まらない。
俺は髪を引っ張った。
ミルの顔が苦痛で歪む。
それでもミルは、微笑もうとした。
苦痛の中での笑みはぎこちなかった。
だが、酷く胸を打たれるのだった。
「ぼっ、くは……ころっ、して、しまった……のです。と、うさん、と、かあ、さんを」
ミルの口が、ゆっくりと動いていく。
言葉の意味を、理解出来なかった。
俺はミルの髪から手を離す。
彼の肩を持ち、顔を近付けた。
ミルの微笑みは、もうなくて、涙を堪えるようにして歪んでいた。
堪らなかった。
俺はミルの首元に顔を埋めて、彼の華奢過ぎる体を抱き締める。
「どういう、こと?」
「にじゅ、う、人格、だったの、です。ぼく、は……親から、ぎゃくた、いを、受けて、いたらしい、のです。ぼ、くの、中に、いた、別の人間、が……耐え、きれな、くて、殺して、しまった、のです」
ミルの体は震えていた。
俺は力の限りミルを抱く。
ミルの腕が、背中に回ったのか、感触を感じた。
「し、んぷ、さまが。じんか、く、を、統合、して下さって。ぼく、の中に、その時、の、記憶、が、あります」
ミルは震える体で話を続けた。
背中に回された手が、俺の頭に移ってきた。
ぽんぽん、とあやすように叩かれる。
子供扱いのようで嫌でもあったし、その反面、心が温かくなる感覚が嬉しくもあった。
「ミル。ミル。ねえ、ミル。愛しても良い? 俺でも、愛することが許される? もし許されるのなら、俺は、ミルを愛したいよ」
「ど、うせい、あいは、冒涜、になり、ます。僕は、君を守りたい、けど。受け入れることは、出来ません」
ふるふると、首を横に動かすミルは、それでも俺の腕から逃げようともしない。
俺の髪に指を絡めている様は、まるで恋人同士の戯れだ。
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