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一章:恋に堕ちた悪魔の子
看病をする場合 01
しおりを挟む【看病をする場合】
外に出ると、神父がミルを抱き抱えようとしているところだった。
顔は先程よりも真っ赤に染まっている。
息も荒いようだ。
もっと早くに気付いてやれば良かった、と後悔する。
俺は神父に近付き、ミルの顔を窺う。
身長の高い神父に抱かれるミルは、俺の身長よりも20cm程は上にいた。
俺は神父の後にくっついて教会に戻り、普段は足を踏み入れることのない、神父達の住居スペースまで進む。
ミルの部屋だろうか。
布切れが垂れ下がり区切られた部屋に神父は入って行った。
俺も後を追う。
狭い部屋だった。
ベッドと机が、詰め込むようにして置かれている。
神父はベッドにミルを置いた。
「フィン、ミルを頼む。私は拭くものと薬を用意してくるから」
そう言い残し、神父は部屋を出て行く。
俺は床に膝を着き、ミルの顔を覗き込んだ。
苦しそうに歪む表情は、不謹慎だがいやらしかった。
手を伸ばし、濡れて顔に貼り付いているミルの髪を払う。
不意に腕を掴まれた。
ミルの手だ。
縋るように掴んでいる。
ミルの目から、涙が一筋零れた。
「ミ、ル?」
声を掛けても返事はない。
夢でも見ているのだろうか。
酷くうなされている。
俺はミルの手を腕から剥がし、俺の手と手の間に、ぎゅっと挟み込んだ。
暫くしてから神父が戻ってきた。
手にはタオルと着替え、薬草を擦ったのだろう、濃い緑色をしたどろりとした物体の入った器を持っていた。
「手伝ってくれるかい、フィン? 服を脱がせて」
机の上に一旦それらの物を置き、タオルを手にする。
俺は首肯し、既に乾きつつあるミルの服に手を伸ばす。
ボタンを上から外していき、腕を抜いて脱がせた。
ミルの体はガリガリに痩せていた。
細いとは思っていたが、此処まで痩せ細っているとは思わなかった。
「ミルはね、軽い拒食症なんだ。自分を、許せないんだろう。これでも大分良くなった。昔は見ることも躊躇われたからね」
驚いている俺に、ミルの体をタオルで拭きながら神父が説明した。
恐らく、タオルをお湯で濡らしてあるのだろう。
湯気が立ち上っている。
「なんで」
「ミルは、君よりも遥かに重い罪を、犯した。自分の意思ではないが、己のしたことだ。私から詳しいことは言えないが、ミルも戦っているんだ、自分自身とね。フィン、君と同じだよ」
神父の手はミルの下履きを脱がしていく。
俺は何となく目を逸らした。
神父のいる場で見てしまうのは、気が引けた。
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