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一章:偵察
神沼さん家の事情 15
しおりを挟む「小畑さんの調査も頼めば良かったじゃん」
今日一日の苦労を思い、つい文句が口を吐いてしまう。
純の双眸がぱちくりと瞬き、ふは、と息を吐き出した。
「言ったでしょ? ネコの手も借りたい状況だって。出来たら小畑さんの調査はアツシくんに頼みたいんだよ。まだ解らないけど、もしかしたら潜入捜査になる可能性もあるからさ。それなら、身内でやった方が報告とか色々な面でいいかなあ、ってこと。因みに、豆屶は既に潜入捜査に入っていて、森さんも潜入捜査に取り掛かる準備をしているから、そうしたら、あと頼めるのはアツシくんだけでしょ。今は他の件で忙しいから、此方にはあまり人員割けないしね」
森と言う男は、以前倉本の本宅にいた家族(構成員)だ。
純の中では未だに身内であり、一番調査を依頼しやすい人でもあった。
そして他の件で、と言うのは組関係のことである。
まだ見習いの淳志には詳しい事情は知らされていないが、上でゴタゴタが起きていると聞き及んでいた。
組関係の重要案件と純の我儘である司破の件では、当然、組関係が優先される。
「ま、そういうことなら、うん、わかった。そっちも時間ある時に聞き込みしておくよ。潜入捜査する段階になったら、また詳しいこと指示して、兄さん」
納得したと頷き、ニッとした笑みを向けた。
長兄の手が淳志の頭に伸びてくる。
ひんやりとした冷たい手が、淳志の髪を撫でた。
「アツシくんは、本当にイイ子だね。お兄ちゃんのために働いてね」
嬉しそうに双眸を細め、柔らかな表情で微笑む純に、胸が痛んだ。
偶に魅せるこの優しさが、とても恐ろしい。
恐怖に怯える心を誤魔化されてしまう。
ヒドイ男であると知っている筈なのに、この人のために体を張りたくなってしまうのだ。
騙されるな、と理性は警鐘を鳴らすが、その警鐘をいつも裏切るのは淳志自身なのである。
うん、とはにかんで頷く淳志は、長兄に操られている自覚を持って尚も、彼のために働くことに悦びを抱いていた。
* * * * * *
次の日、自室で寝ていた淳志は、10時頃に純の電話で飛び起きることとなる。
前日の夜、遅くまでGPSのデータとにらめっこをしていたためか、頭が重くて働かない。
うあー、と寝起きの気怠さに唸り声を上げ、スマホを耳にあてた。
「おはよ、アツシくん。学校に着いたって連絡があったから、司破くんのマンションで待機してね。受信機忘れないでよ?」
純は出先なのだろう、ざわざわと雑音が目立つ。
恐らくは、組関係のことで組長と動いているのだろう。
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