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一章:偵察
神沼さん家の事情 13
しおりを挟む「まあね。考えてもご覧よ、アツシくん。君にメシアくんのことが知れてしまったとなれば、当然僕が動き出すことは司破くんだって解っている筈。いつもなら何もしないで逃げるだけだったけど、もし本当にメシアくんが特別だとしたら、今回は何かしら対策を講じると思うんだよね。でも僕もやっと巡ってきたチャンスを逃したくはない。それでいつもに増して念には念を入れているんだよ。まあ特別でない可能性もまだ捨てられないんだけど、一応ね」
様々な可能性を考えた上でのことであると言う。
豆屶を家に残したのも、あらゆる可能性を考えてのことだったのだ。
彼の頭の中では一体何通りの可能性と、起こり得るだろう予見可能性が計算されているのだろうかと思うと、矢張り長兄は恐ろしい。
「取り敢えず、出来る限り調べてみるけど、期待はしないでよ? 所詮は俺、素人だからさ」
後で詰られるのも嫌で、先に念を押した。
バカだなあ、と呆れた口調で返される。
「はは、解ってるよ。今回はいつもより難しいみたいで、僕も先が読めないし、森さんも豆屶も時間掛かりそうでね。藁にも縋りたい、猫の手も借りたい心境なの。大丈夫、アツシくんに期待したことなんて、出逢った時から一度もないから安心して?」
心底愉しそうに笑っているのが想像出来た。
くそ、と悪態を吐きたいのを我慢し、「ならいいっす」と低い声で答える。
「じゃあ、頼んだよ」
時間がないのだろう、慌てたように純は電話を切った。
スマホを床に放り、敷きっぱなしの布団の上に仰向けで転がる。
確かに、今回の件は難しいのだろう。
それでも、純がそれを明言することは珍しかった。
大体の出来事は長兄にとっては予見出来ることであり、先を読んで達観したように笑っている。
それが淳志の純に対するイメージだった。
そんな長兄が、先が読めないと言ったのだ。
まだ情報が足りないと言うことなのは解るが、その情報を集めるのが難しい。
もしも司破が何かしらの対策を取ってくるとするならば、早目に情報が欲しい。
それで淳志に頼んだのだろう。
いつもならば、もっと傲慢で強引に命令を下す癖に、こういう時ばかり弱さを見せる。
時々見せるその弱さに、淳志は弱かった。
狡い男だと思う。
どうしたら他人が動くかを熟知しているのだ。
淳志は溜息を吐き出した。
長兄のことは好きになれない。
それでも、淳志にとっては少しでも血の繋がった兄である。
好きになれないのと同じだけ、心から嫌うことも出来ない。
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