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一章:偵察
神沼さん家の事情 11
しおりを挟む彼は恭しく其れを受け取り鞄に仕舞い込むと立ち上がった。
「いつもご贔屓に有り難う御座います。純さんにも宜しくお伝え下さい」
そう言って彼は倉本の家から出て行った。
探偵を玄関先まで見送った淳志は両腕を上に上げ伸びをする。
「うーん、なんかすげぇ面倒なことになる予感しかしねぇなあ。明紫亜メシアめしあ。あー、何この救世主的なキラキラネーム! 呼ぶの恥ずかしいよね。親の神経疑うわ、って。子育て放棄してんだから、そら母親失格だよな。うし、メアたんにしよう」
独り言をぶつぶつと呟きながら豆屶の部屋に向かう。
舎弟の住む離れに繋がる渡り廊下を渡り、豆屶の部屋の襖を叩いた。
「豆せん、淳志っす。開けてもいい?」
「ああ、どうぞ。坊ちゃんが訪ねてくるなんて珍しいこともあるもんですね」
返事があるのを確認し襖を開け放つ。
中には入らない。
淳志は、この豆屶と言う男が苦手だった。
苦手と言うよりも、純に似た類の恐怖を抱いている。
純程ではないにしても、この男に甚振られてきた淳志は、とても自分から進んで二人きりになろうとは思えなかった。
「例の司破ちゃんの件で、さっき報告受けたんだけどさ。ちょっと情報集めるの難しいみたいで、豆せんに手伝って貰いたいみたいだよ。可能なら報告書渡すけど、どうする?」
ラフな格好の豆屶は、無言で淳志に近寄る。
英字のプリントされたTシャツは、組長と彩菜からの誕生日プレゼントだったと記憶している。
背の高い男が目の前にやって来て威圧感に一歩退いてしまう。
「若からも手を尽くせと言われておりますんで、お手伝いするのは構いませんが。森さんが難しいと言っているんであれば、それなりに箝口令が敷かれている可能性もありますね。まあ、何とかしますわ。報告書貰えますか?」
淳志の逃げの体勢に豆屶の口端は僅かに上がる。
顎を擦り何やら思案気な表情になるも、銀フレームの眼鏡を人差し指で押し上げると淳志に片手を差し出してきた。
「はい、報告書。じゅんじゅんにも渡したいからコピー取ってくれる? てか、じゅんじゅんは何時頃帰ってくんの?」
この日、朝早くから長兄は出掛けていた。
跡取りとして色々と忙しいようだ。
組長の付き添いで会合に出席する予定である。
本来ならば豆屶も同伴するのだが、純の命令で居残り組になったのだ。
こうなることを予測していたのかもしれないと思うと恐ろしい。
報告書を豆屶に手渡し首を傾げた。
「21時には戻られる筈だよ。若もこうなることを見越していたようだから、私は早速だが出掛けるとしようかね」
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