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一章:秘められた情事
プロローグ
しおりを挟む【プロローグ】
寒い。
体が凍えて、ガタガタと震えが止まらない。
足を抱え全身を縮こませても、暖は全くと言って良いほどに取れない。
吐き出す息は真っ白で、無情にも空から降り掛かる白い結晶に、体温をどんどんと奪われているようだった。
それでも僕は、叫ぶことが無駄だと知っていた。
助けを呼んだところで、僕の声は届かないのだ。
いつしか、助けて、と言う言葉は喉の奥で凍り付いていた。
誰も助けてくれないことは、身に染みて解っていた。
眠さで意識が朦朧とする。
真冬のベランダに、薄着で何時間もいるのだ。
ろくに食事すら食べていない体は、既に限界を迎えようとしていた。
寒くて寒くて身が裂けそうに痛いのに、眠くて眠くて仕方がない。
瞼は自然と落ちて、視界は真っ暗になる。
嗚呼、死ぬんだ。
と意識した時に、頭の中を記憶が走り去って行くのだった――。
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