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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係(勉強合宿編)20
しおりを挟む火起こしの殆どを義一郎がテキパキと手際よくやってくれ、彼の慣れた手付きに感心する。
義一郎の指示に従い、ちまちま、と薪を足し、火力が強くなっていくのを体育座りで見詰めた。
ぱちぱち、と火が爆ぜるのを隣で眺める義一郎が、ぼんやり、と呟く。
「涙夏君とメシア。同じコテージで大丈夫かなあ。バスで寝てるメシアに大興奮していたけど」
火バサミを操り火加減を調節する義一郎の眼鏡が曇っている。
明紫亜に太めの薪を投入するよう告げた義一郎から火バサミを受け取った。
挟んだ薪を恐る恐る火の中にと入れる。
炎に包まれた薪自身が火を噴き出し火力を上げていく。
「僕の寝顔の何に興奮するんだろうね? 僕、ルイカのこと、よく解んないんだよ。でも、ギーチもいるし大丈夫じゃないかな」
大きく燃え盛り、火から炎に変わっていく様に見惚れていると、義一郎の首が傾いでいく。
「僕、寝付きいいし、一度寝ると朝まで起きないから、あんまり大丈夫ではないと思うよ? メシアの嫌がることはしないだろうけど。興奮具合が……」
凄まじかった、としみじみ言葉を漏らす義一郎に、バスの中で何があったのか、と頭を抱えたくなる。
隣の水場で米をといでいる男に視線を投げた。
涙夏は数人の男子と女子に混じり談笑している様子だった。
上手い具合にクラスにと溶け込んでいる涙夏を羨ましく思う。
「でもさ、今更他のコテージで寝たいだなんて言えないし。ルイカのこと、別に嫌いじゃないし。……その、ギーチとも一緒に、寝たい、し」
もごもご、と照れ気味に義一郎を見遣る。
曇った眼鏡を、くい、と上げ、真っ赤な顔を向けてきた。
「ぼ、ぼぽ、僕も、メシアと一緒に、過ごしたい」
ふわり、と微笑む義一郎に明紫亜の胸は高鳴る。
このドキドキキュンキュンを例えるならば、きっと『萌』という現象である。
こそばゆいような、そわそわと落ち着かない感覚に「ふぎ、ぐ、ぐ」と唸ってしまう。
「ギーチ、大好きだよ! 僕、ギーチと寝る!」
火バサミをコンクリートの上に放り、ぎゅむ、と義一郎の片手を掴んだ。
「メシア。僕も、その、メシアのこと、好き、だよ?」
ぎゅ、と握り返してくれる義一郎に、にへら、と顔が弛んで戻らない。
周りのクラスメイト達の視線に気付き、そちらに顔を向ける。
えっへへ、と無意味に笑顔を振り撒いてみると、彼等は何故か頬を染め顔を逸らす。
愛弥とよく話している男子達だった。
不意に後ろから「メーシーアー」と恐ろしい声が降り掛かり、びくん、と肩を揺らす。
「委員長とイチャイチャしてないで此方手伝って」
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