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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係(勉強合宿編)13
しおりを挟む愛弥の指摘に「お兄ちゃんって誰だ?」と周りにいた人間が一斉に首を傾げる中、明紫亜の眼は涙夏を捉えた。
まだ反省中らしい涙夏が愛弥の後ろから明紫亜を見ている。
確かに、寂しそうに双眸を細めている様には胸が掴まれてしまう。
「アミちゃん。この際だからハッキリ言っておくけど。ルイカはお兄ちゃんじゃないから」
きっぱりと告げながら愛弥の隣を通り過ぎて行く。
傷付いたように眉間を、ぎゅっ、と寄せている涙夏の前に立ち、彼の手首を掴んだ。
「ほら、ルイカ。ぼけっとしてると置いて行かれるよ?」
ぐいぐい、と引っ張り義一郎の隣まで連れて行く。
愛弥が安心したように顔を綻ばせていた。
「やっぱり、ルイルイとメアは一緒にいないと駄目だと思うんだ、愛弥さんは」
嬉しいのを隠しもせず、えっへへ、と笑い愛弥はリュックを背負い詩音と輪と共に並んだ。
丸井の合図で班毎に整列し点呼を取る。
人数確認をしている途中で、A組が移動し始めるのが見えた。
女子生徒に囲まれて歩く司破が視界に入り、ふんぐぐ、と唸り声が漏れ出る。
司破が初恋の明紫亜にとっては、はじめて湧いた嫉妬だった。
奇声を上げるキノコを横目に隣の義一郎は「何事か」と明紫亜の視線を目で追うも、A組の生徒が歩いているのを確認出来ただけで特に変わったこともなく首を捻る。
明紫亜の後ろに立つ涙夏は事情を察し面白くなさそうに眉を顰めている。
涙夏の隣で三人の様子を眺めていた愛弥は「ふうむ」と唇に人差し指を当てる。
「ギーチン。多分、メアは慕っている笹垣先生が女共に囲まれているから面白くないんだと思うよー。メアってば、笹垣先生のことメタクソ尊敬してるもんな。愛弥さん的には生徒×教師も好物なんだが。メアならやっぱり、教師×生徒だよね。笹垣先生の受けは、流石の愛弥さんでも想像出来んのだ」
一つの答えに辿り着いた少女は「ぐふふ」と気味の悪い笑い声を発して目の前の義一郎に告げていく。
この少女の直感の鋭さは恐ろしい。
明紫亜は振り向いてマジマジと愛弥を見詰めていた。
「な、っ、ななな、何で」
わかったのか、と問う言葉は外に出ることなく明紫亜の喉で詰まってしまう。
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「えー? 笹垣先生のこと、いつも目で追ってるし。授業中も尊敬の眼差し向けてるじゃん? メアをつぶさに観察している愛弥さんに解らないことなどないのだよ!」
えっへん、と腰に手を当てドヤ顔を向ける愛弥の頭を呆れ顔の涙夏が掌で叩く。
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