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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 123
しおりを挟む「馬鹿キノコですよー。司破さんのこと笑わせられるの、僕だけだもん。司破さん専属の馬鹿キノコです!」
にへら、と緩く笑う明紫亜に返す言葉もなく、司破は無言になった。
黙って着替えている司破を放置して明紫亜はソファーに座りスマホを取り出す。
「ねえ、司破さん。写真写るの嫌いだよね? 絶対嫌だよね? ダメ、ですよね?」
スマホの画面を凝視する明紫亜の言いたいことを理解していながら「何が?」と聞き返した。
上着を羽織り終え明紫亜の横に腰を落ち着かせると、少年の縋るような眼に見詰められる。
「解ってる癖に、ズルいんだから。……記念に写真、撮りたい、です」
ぷすう、と頬に空気を溜めつつも上目遣いに願望を伝えてくる少年に苦笑を溢した。
明紫亜の腕を掴み引き寄せると「ふんへ?」と戸惑う声が飛び出す。
「この体勢なら撮ってもいいぞ」
膝の上に乗せた明紫亜の体躯を背中から抱き込み耳元で囁く司破に、少年は顔を赤くした。
「ぐぬ、ぬ、う、……なんという二択。なんという選択肢。こんな格好を後世に遺すだなんて! でもでも、っ、写真撮りたい!」
顔を両手で覆い左右に身体を揺するのに合わせてキノコヘアーも動く。
くそう、と呟いた少年は顔を上げ、スマホを持つ手を掲げた。
「撮りますよっ!」
ヤケクソ、とばかりに発せられた明紫亜の声の後に続けて、パシャパシャパシャ、とシャッター音が響く。
連写しているとわかり、一瞬眉を寄せた司破であったが、徐に明紫亜の顎を掴み横を向かせる。
唇を合わせ舌で上唇をなぞっていく。
「こんのっ、エロ教師! 何してくれてんですかっ!」
狭間に舌を捩じ込もうとして明紫亜の拳に頭を殴られていた。
スマホはソファーの上に転がっている。
「あ? 撮らせてやったんだ。このぐらいいいだろ、別に」
膝の上から飛び降りた明紫亜の手が勢い良くスマホを拾い大切そうにポケットに仕舞うのを見届け、司破も立ち上がった。
「ほら、帰るぞ。今日は色々と……ありがとな。楽しかった」
文句を言い出しそうな顔の少年の背を押し退室を促して、その背中に感謝の言葉を掛けてしまう。
思いの外に恥ずかしくなり、もんほり、と膨らむキノコを掻き混ぜた。
「喜んで貰えて良かった。僕も楽しかったです。来年は、お出掛けとかもしてみたいですね」
振り向いた明紫亜の顔が、えへえへ、と照れたように笑みを浮かべている。
「そう。行きたいところ、考えておけよ」
「えー、司破さんの誕生日なのに何で僕が考えるんですか?」
もう、と呆れたように部屋を出る少年の後に続いて部屋を出た。
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