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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 122
しおりを挟むうん、とか細く響いた明紫亜の返事が胸を震わせる。
心臓が捻り潰されそうで「メシア」と名前を呼んでいた。
「助けて、って言葉が無意味なの、僕、知ってるんです。どんなに叫んでも泣き喚いても、誰も気付いてくれもしない。死にかけた時になって漸く救いがやってくるんです。それなら救いなんか要らないって思いました。迷惑にしかならないなら、あの時に死んでいれば良かった。どうして神様は死なせてくれなかったんだろう。僕なんかを救うならお母さんを救って欲しい。そんな風に何度も考えた。ほ、本当は。今も、助けて欲しいなんて言うの、すごく、気持ち悪い。でもきっと、司破さんは僕が助けてって言葉にしなくても勝手に行動するから。其処にいてくれるだけで救われた気持ちになっちゃうから。無意味に意味が出来ちゃったんだよ。責任持って最期まで僕のこと助けて下さいね」
胸板を押し司破から身体を離した明紫亜は、ほわり、と笑う。
未だに潤む瞳は今にも涙を降らしそうで、震える口唇は彼が無理に笑っていると伝えている。
「お前は本当に底抜けの馬鹿キノコだな。頼まれなくたってそのつもりだ」
ぴこん、と額を指で押され尻餅をついて床に座り込んだ明紫亜の顔が司破を見上げている。
ふっ、と吐息で笑い立ち上がった司破の腕がバスローブを脱いでいくのを静かに見ていた明紫亜は、手の甲で双眸を拭った。
「知ってますもん。司破さんは司破さんのしたいように生きているだけで、お願いしたとかしないとか、そういうことじゃないって解ってます。お願いしなくても僕のこと助けてくれることも知ってます。それがどんなに特別なことかも、ちゃんと理解しています。司破さんの行動原理の中に僕がいるの、幸せ過ぎておかしくなりそうだもん。ちゃんと解っているけど。言葉にしてみたかったの。頑張れるように形にしてみたかっただけなんだ」
座ったままの姿勢でパンツに足を通す明紫亜に「だからお前は馬鹿キノコなんだ」と告げた司破はバスローブをベッドに置き、自分の脱いだ服を掴む。
「お前以上に馬鹿なのは俺かもしれねぇけどな。どう足掻いても逃げられないなら、お前のこと丸ごと全部受け止めるしかねぇだろ。いちいち難しいことを考えるのはやめた。だからお前も何も考えずにテメエの生きたいように生きろ」
服に袖を通す司破の顔が優しくて、明紫亜はシャツを羽織りながら、ふんもお、と奇声を上げていた。
ズボンに足を突っ込んでいる司破の唇が震え出し、堪え切れずに漏れ出た笑い声に明紫亜も嬉しくなる。
「ホント何なのお前」
一頻り笑う司破を見ながら着替え終えた少年の唇が尖っていく。
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