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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 94*
しおりを挟む「司破さ、っ、……ぁっ、やぅ、っ、ほんと、やっ、だ」
このままだと本当に異物を挿入されてしまいそうで明紫亜は身を捩る。
司破の体だと思えばこそ堪えられる挿入行為なのだ。
他のものなど考えただけで気が狂いそうになる。
手足をばたつかせ嫌がる明紫亜の体は、溜息を吐き出した司破の巨躯に覆い被さられていた。
開脚したままの足が上方に動き少し辛い体勢になる。
頭を愛しそうに撫でられる感覚に「ふぬう」と呻き声を漏らした。
心地良くて蕩けてしまいそうなのが悔しい。
いつもならばやめてくれるのに、今日は引く気配をみせない司破に無性に腹が立つ。
けれども、考えもなしに嫌がることをする男ではないことも解っていた。
「落ち着け、メシア。過去にいつまでも囚われてんじゃねぇぞ。目を背けるな。今、お前のナカにあるのは、誰の指だ?」
耳元を擽る声色が優しくて、埋められたままの指を、きゅう、と締め付けてしまう。
荒い息を整え「司破さんの」と答えを返す。
肩口に額を押し付けた。
恐怖で震える体は誤魔化しようもないぐらいにガタガタと振動を繰り返す。
「お前を傷付けた人間は、もういないだろ? お前を犯していいのは、俺だけだ。他の奴じゃない。それを忘れるな」
奥まで押し入っていた指が僅かに出て行き、明紫亜の弱い場所を二本の指で、ぐりり、と押される。
途端に体中を駆け巡る快感に司破の肩を噛んでいた。
「ひゃ、っ、ぅ、あ、っ、ぁ、そこ、……したら、だ、っ、め」
執拗に同じ箇所を穿たれ、意識が愉悦に流されていく。
やだやだ、と口走れば唇を塞がれる。
上唇を舌でなぞった後で吸い付いてくる司破の口唇に、そろり、と舌先を伸ばしてしまう。
いつもこの男の口付けに誘われて夢中になってしまうのだ。
「俺以外の物を挿れたくないのは解った。俺が挿れるんだ。俺の一部だと思えばいい。指でも舌でも性器でも、好きなものを想像してみろ。本当に無理ならやめるから、少しだけチャレンジしてみないか?」
舌先が触れ合い、軽く吸われるだけで司破は離れていく。
物足りないと尖らせた口唇に軽く口付けられた。
額を合わせた至近距離で見詰められながら問われる。
何の感情も映さない瞳だが、明紫亜には司破の優しさが伝わってきた。
きっと彼は明紫亜の体とメンタルのことを一番に考えてくれているのだろう。
少しづつでも慣らしておけば、本番を迎える時の負担は小さくなる。
指で慣らすよりも、こういった器具を使用した方が効率的なのかもしれない。
挿入に対する恐怖心や嫌悪感にも打ち勝つ必要があった。
過去と向き合うには必要なことなのだ。
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