あべらちお

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
148 / 242
一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 53

しおりを挟む


それであれ、いつもの狙った子供らしさではなく、自然と出た彼本来の子供っぽい仕草のように司破には思え、瞬いて明紫亜の顔を無言で見詰めていた。
ふっ、と溢れた司破の笑みは、明紫亜からしたら甘ったるいもので、今まで見た彼の笑顔の中で一番人間らしいものであった。

「可愛いな、お前。そっちの方がずっといい」

そんな甘い顔で放たれた台詞と共に耳元を指先で撫でられ、明紫亜は「ウンギャッ」と怪獣のように叫んでしまう。
上げた顔は再び司破の胸にと逆戻りとなり、震える腕はボスボスと厚い胸板を何度も殴打した。

「そっ、れっ、禁止、っ、て、言った、のに。司破さんのタラシ、変態、人殺し! 確かに殺してくれとは言ったけど、こんな殺され方は嫌ですよー!」
「ああ? お前は何を訳のわかんねぇこと言ってんだ。死ぬかこんぐらいで。俺の顔が幾ら凶器顔だからって無理だろ。寝言は寝て言え」

絞り出すように捻出した言葉を口に乗せれば、勢い付いて責め立てるようにがなる明紫亜だったが、頭を掴まれ無理に上向かせられると、司破の片手に頬が捕まってしまう。
既に凶悪顔にと戻っている強面に睨まれ、ふんぐう、と息を漏らした。


 ふぐふぐ、と声を上げながらほっぺたを離さない司破の手を掴み引き剥がそうとする。
そんな明紫亜を見下ろし、ふん、と鼻で嗤うと司破の手が離れていく。

「司破さんって、自覚なく甘ったるい顔、晒すんですね。もはや公害レベルですよ。普段が殺人鬼顔だから余計にキラキラ見えるし。無機質な顔してるのに不思議ですね」

自身の頬をサスサスと擦りつつウズウズとした視線を投げる明紫亜は、謎を解き明かしたいのだろう、若干楽しそうに、ふむん、と独特な息を吐き出した。

「お前の目が腐ってるだけだろ。俺の顔は甘ったるいなんて言葉とは真逆に位置してんだよ。ふざけんな。今まで一度も言われたことねぇわ」

背中を向けて歩き始める司破の後ろを慌てて追い掛ける。
方角的に明紫亜の帰宅ルートだった。
途中まで送ってくれるのだろう。
明紫亜は彼の隣に並び、つい弛んでしまう顔から手を離した。

「そりゃまあ、そうでしょうね。だって司破さん。僕だけでしょ? 司破さんの愛しくて堪んないって顔、見たことあるの僕だけだよね? 心から楽しいって思って笑ったの、僕の前でだけでしょ? 司破さんの特別だって、自惚れても許されますか?」

自信があるのかないのか、探るように司破を見上げている明紫亜に、司破の口からは「ああくそ」と悪態が飛び出る。
がしがし、と自身の髪を掻く様を眺め、明紫亜は彼の言葉を待った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...