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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 44
しおりを挟む「イヤなの! 離れたく、ないんです。危なくても、それでも、僕にとって必要な存在なんだと、思うんです。すごく、僕のこと大事に想ってくれてるの、伝わってくるんです。僕だけは拒絶しちゃいけないって、解るんです。うまく言えないけど。ごめんなさい」
司破の言葉を遮り、明紫亜が声を張り上げた。
俯いている彼の肩は震えている。
司破は溜息を吐き出して、明紫亜の髪に手を差し入れた。
こつん、と額を合わせると不安で一杯の瞳と目が合う。
「わかった。メシアがそういうならそうなんだろ。意味はわからねぇが、メシアの感じたことだ。それが正しいんだろうよ。友達なら許してやる。それ以上を求められたら、死ぬ気で拒絶しろ」
優しい口調だが真剣な眼で射抜かれ、明紫亜はゴクリと唾を飲み込んだ。
杉木に感じる不思議な感覚を、理解しようとしてくれることに感極まり、眼前の唇を奪うと、ふへへ、とはにかむ。
「はい。僕が愛しているのは司破さんなので大丈夫、だと思います。なんかそういう素振りがあったら、早めに相談しますね」
大丈夫だと言い切れないことに得体の知れない気持ち悪さを感じる。
杉木に対して抱く感情は未知のものばかりで、確定要素が何一つとしてなかった。
それでも明紫亜は、杉木のことを危ないからと切り捨てることも出来ない。
司破に申し訳ないと思うが、こればかりはどうにも出来そうになかった。
「自分で拒絶出来ないようなら、俺が何とかする。相談しろよ?」
念を押す司破に頷くと、唇を啄まれる。
触れるだけでは満足出来なくて、明紫亜は舌を伸ばした。
もっと深く司破を感じたい。
こんな風に思うのは、ただ一人、司破に対してだけだった。
舌を絡め合い、角度を変えて深く交わる。
唇を吸われ、柔く噛まれると背中がゾクリとした。
「司破、さ、ん。今日は、本当に、しないの?」
くちゅり、と音を立てて離れていく口唇を眺め、明紫亜が強請(ねだ)るような目を向ける。
「しねぇよ。俺も我慢してんだ。お前も我慢しろ」
熱い息と共に吐き出された台詞に、明紫亜の唇が尖っていく。
手足をバタバタとさせ駄々をこね始めた。
「我慢するぐらいならしましょうよー! 司破さんが、欲しいよ。全然足りないもん」
ね、と誘うように唇を寄せれば、ぽかりと頭を叩かれる。
ふぐう、と頭を押さえ司破を睨むも、逆に睨み返され肩を落とした。
「今日は駄目だ。お前が、いつにも増して可愛いのが悪いんだろ。抑えがきかなくなったら、困るのはメシアだぞ?」
ああくそ、と悪態を吐く司破は片手で顔を隠している。
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